エコーの力:聞いた言葉を繰り返す能力
ギリシャ神話のニンフ(精霊)であるエコーは、最後に耳にした言葉をそのまま繰り返すという特異な力を持っていました。
この不思議な能力は、もともと彼女が生まれつき備えていたものではありません。実は、女神ヘラによる厳しい罰の結果だったのです。
ヘラの罰によって奪われた声
エコーはおしゃべりでいたずら好きなニンフでした。あるとき、彼女はゼウスの浮気を隠すために、怒ったヘラを長々と話で引き留めました。それに気づいたヘラは激怒し、罰としてエコーの自由な言葉を奪ってしまったのです。
こうしてエコーは、人間や他者が話した最後の言葉だけを繰り返すことしかできない体になってしまいました。自分から言葉を紡ぐことは二度とできなくなったのです。
ナルキッソスへの叶わぬ恋
声を奪われたエコーは、美青年ナルキッソスに出会い、一目で恋に落ちました。しかし、呪いのせいで自分の想いを言葉にして伝えることができません。彼女にできるのは、ナルキッソスが発した言葉の末尾を繰り返すことだけでした。
残念ながらナルキッソスはエコーの想いを受け入れず、冷たく突き放しました。失恋の悲しみに打ちひしがれたエコーは、山野をさまよいながら恋しい人のことを思い続け、ついには肉体が消え去り、声だけが残ったといわれています。
「こだま」の語源となった悲劇のニンフ
この神話が由来となり、英語の「echo(エコー)」、日本語の「こだま」という言葉が生まれたとされています。山あいで響き渡る反響音は、今もなお、愛する人への想いを伝えられなかったエコーの姿を映しているのかもしれません。