6月16日(木)、スペイン・ブルゴス近郊のアタプエルカ山脈(Sierra de Atapuerca)にある遺跡群で、フアン・ルイス・アルスアガ、ホセ・マリア・ベルムデス・デ・カストロ、エウダルド・カルボネルの3名の指揮のもと、2022年度の発掘調査が正式に始動しました。
6月には約75名の調査員がエレファンテの竪穴(Sima del Elefante)、ガレリア(Galería)、グラン・ドリナ(Gran Dolina)、ミラドール洞窟(Cueva del Mirador)の4遺跡で発掘作業に当たります。7月にはアタプエルカ発掘チームの残りのメンバーが合流し、総勢約280名の大規模な体制となります。調査対象は先述の遺跡に加え、マヨール洞窟(Cueva Mayor)内のポルタロン(Portalón)、ウェソスの竪穴(Sima de los Huesos)、エスタトゥアスの回廊(Galería de las Estatuas)、そして屋外集落跡のフエンテ・ムダーラ(Fuente Mudarra)にも及びます。さらに7月には、アルランソン川の川岸で堆積物の水洗作業も開始されます。
アタプエルカ山脈で発掘に携わる調査員の大半は、アタプエルカ・プロジェクトに属する以下の研究機関のメンバーです。
- ブルゴス大学(UBU)
- 国立人類進化研究センター(CENIEH、ブルゴス)
- 人類古生態学・社会進化研究所(IPHES、タラゴナ)
- 人類進化・行動研究センター(マドリード・コンプルテンセ大学-ISCIII)
- サラゴサ大学(UNIZAR)
これに加えて、国内外の他の大学や研究機関からも多くの研究者が参加しています。
資金面では、カスティーリャ・イ・レオン州政府が発掘調査に充てる助成金を補完する形で、アタプエルカ財団が組織・行政・経済・物流・保守・広報・イベント運営などの支援を担い、キャンペーン全体の運営を調整します。
以下では、今回のキャンペーンで発掘される各遺跡の特徴と、それぞれに設定された調査目標を詳しく紹介します。
エレファンテの竪穴(Sima del Elefante)
鉄道溝(Trinchera)に位置するこの遺跡からは、120万年以上前の人類化石が発見されています。今回の目標は、レベルTE9cを完全に発掘し終えることです。これにより、2014年度のキャンペーンから調査が始まった下位のレベルTE9dの全体発掘へと進むことができます。あわせて、エレファンテの竪穴の洞窟底部の特定も目指します。地形測量データによれば、底部は昨年実施された掘削孔の地表から約1メートルの深さにあると考えられています。さらに、南側区域の堆積物、具体的にはレベルTE7に相当する層でのボーリング調査も継続されます。このTE7は、現在までに知られているアタプエルカ山脈全体で最古の化石層です。
ガレリア(Galería)
ガレリア遺跡も鉄道溝に位置し、グラン・ドリナから約50メートルの距離にあります。50万年前から25万年前という幅広い年代範囲をカバーする遺跡で、今回は22万年前から28万年前に年代づけられるサブユニットGIIIaの調査を継続します。この考古層は、過去の調査でユニットGIII全体よりも多くの動物化石と石器を出土させており、今回は大規模な発掘が行われます。あわせて、遺跡の地層学的な再検討も進められます。
グラン・ドリナ(Gran Dolina)
鉄道溝で最もよく知られた遺跡の一つで、ホモ・アンテッセソル(Homo antecessor)という人類種が発見された場所です。今回は、約40万年前のレベルTD10と、90万年前から100万年前のレベルTD4という、年代の異なる2つの層で発掘が続けられます。
TD10
TD10.3の暫定的な解釈を完成させ、可能であればTD10の最後の残存層であるTD10.4の掘削を開始し、アタプエルカにおけるアシュール文化(アシュレアン)の世界の解明を完成させることを目指します。
TD4
過去の調査で得られたコレクション(石器および動物化石)の拡充を図ります。同時に、堆積物の年代をより精密に特定し、当時の洞窟の形成過程を解明するうえで役立つ地質年代学的な調査も優先的に進められます。
ミラドール洞窟(Cueva del Mirador)
アタプエルカ山脈の南端、アルランソン川の谷を見下ろす位置にあります。今回はセクター100とセクター200の発掘を継続します。セクター100では青銅器時代のレベル105を発掘し、銅石器時代の層へ到達する予定です。セクター200では、約4,500年前の銅石器時代の集合墓の発掘を完了させます。墓からは割れ目に残された数個の頭蓋骨の取り出しのみが残っています。さらに、前回のキャンペーンで墓制堆積物の下から見つかった、牧羊民の居住跡に相当する新石器時代の層の発掘も続けられます。
フエンテ・ムダーラ(Fuente Mudarra)
「ホテル・カリフォルニア遺跡」の近くにある屋外集落跡です。今年で5年連続の発掘となり、今回の目標はレベル4bの調査を完了させることです。これまでにこの層からは、ネアンデルタール人が製作・使用した数百点の石器が出土しています。これらの研究により、石器がどのような材料で、どのように作られたのかを知ることができます。
ポルタロン(Portalón)
マヨール洞窟の入り口にあたる遺跡で、近年の先史時代(直近1万年)を研究するうえで例外的に重要な場所です。今回は、昨年に露出した生活面(活動層)の発掘を続けるとともに、洞窟の最終的な使用時期に関わる別の区域(現代、中世、ローマ化期、鉄器時代)や、青銅器時代の各時期の調査も進められます。
ウェソスの竪穴(Sima de los Huesos)
マヨール洞窟の現在の入り口から約1キロメートルの地点にある、深さ約14メートルの垂直の竪穴の底に位置する小さな洞窟です。1976年、アタプエルカ山脈で最初の人類化石がここで発見されました。今回は、洞窟北側の岩相地層ユニット6と7の境界部分の調査を続けます。ユニット6は、非常に粘性の高い赤色粘土中に人類化石が埋蔵されている層で、ユニット7はこの区域では堆積物の少ない肉食獣の角礫岩です。
エスタトゥアスの回廊(Galería de las Estatuas)
マヨール洞窟の現在の入り口から約350メートルに位置する遺跡です。今年得られる成果とこれまでの成果を合わせることで、遺跡を構成する各層序の記述、考古学的・古生物学的な内容、古気候・古生態学的な推論を含む、初の公開総合報告書の作成が可能になります。
アルランソン川での水洗作業
堆積物の水洗作業は、アタプエルカの微体動物群、すなわちアタプエルカ山脈の堆積物から出土する哺乳類、両生類、鳥類、爬虫類、魚類の微小な化石を回収するために行われます。イベアス・デ・フアロスを流れるアルランソン川の川岸で実施され、アタプエルカ山脈で発掘された各遺跡の堆積物がすべて水洗・ふるい分けされます。
物理探査
物理探査では、鉄道溝の洞窟群(グラン・ドリナ、ガレリア、エレファンテ)が位置するトルカス地区での調査を継続します。地中レーダーと電気比抵抗トモグラフィーを用いた探査に加え、特に重要な地点ではコア採取を伴う機械ボーリング調査を複数回実施します。今回の調査結果と過去のキャンペーンで得られた情報を合わせることで、更新世に原人たちが利用したアタプエルカ山脈のカルスト地形システムの発達について、より深い知見が得られるでしょう。
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