考古学的発見

古代ローマ人は気づかないうちに「耐震メタマテリアル」を使っていた? 劇場の基礎に隠された驚きの設計

古代ローマ人は、物理学者がメタマテリアルや変換光学の存在を認識するはるか以前に、耐震保護スクリーンとして機能する構造物を建設していた可能性があります。これはフランスの研究者たちが、研究論文「Role of nanophotonics in the birth of seismic megastructures(耐震メガストラクチャーの誕生におけるナノフォトニクスの役割)」の中で示唆したものです。

研究者らによれば、一部のローマ劇場や円形闘技場の基礎の配置パターンは、現代の電磁波遮蔽装置(クローキング装置)の特性と驚くほど類似しているといいます。こうした「考古学的メタマテリアル」は、地震波を地盤の周囲へ偏向させることで、間接的に耐震保護の役割を果たしていた可能性があるとのことです。

メタマテリアルとは何か

メタマテリアルとは、自然界では通常見られない方法で電磁波や音波を操作するように設計された人工構造物です。メタマテリアルによる新たなデバイスを設計するための数学的枠組みとして「変換光学」が開発されており、その応用例の一つが、物体の周囲でマイクロ波を迂回させる「透明マント(インビジビリティ・クローク)」です。

古代ローマ人は気づかないうちに「耐震メタマテリアル」を使っていた? 劇場の基礎に隠された驚きの設計

メタマテリアルの有望な応用分野の一つが、地震波を建物の周囲に迂回させ、地震による被害から建物を守る構造物の実現です。このアイデアでは、建物の周囲の地中に、穴や固体物からなるネットワークを埋め込みます。特定の波長帯の地震波がこのネットワークを通過する際、内部での多重反射が互いに打ち消し合う(破壊的干渉)ことでバンドギャップが生じ、建物の揺れが大幅に軽減されるという仕組みです。

2012年の実証実験

2012年、リヨンのMénard社のステファヌ・ブリュレ(Stéphane Brûlé)氏率いる土木技術者チームと、マルセイユのフレネル研究所の研究者たちは、深さ5メートルの井戸を二次元ネットワーク状に地中へ掘削することで、この概念を実証しました。近くの音源から音波を発生させたところ、波のエネルギーの大部分が、最初の2列の穴によって音源側へ反射されることが確認されたのです。

休暇中のひらめきが導いた発見

しかしブリュレ氏は、古代ローマ人が知らず知らずのうちに、この原理を先に発見していたのではないかと考えています。彼がフランス中部オータンの考古遺跡を休暇中に訪れた際、道路脇の畑の下に埋没したガロ・ローマ劇場の基礎を写した航空写真を目にしました。一見すると分かりにくいものの、畑に浮かび上がる模様は紀元1世上がる模様は紀元1世紀の建造物の輪郭を示しており、その半円形の構造が「透明マント」の半分と不思議なほどよく似ていることに気づいたのです。

この直感は、数年前に行われた考古学調査の写真によって裏付けられました。劇場の基礎をより鮮明に記録したその写真と、フレネル研究所でブリュレ氏らが製作した直径20センチの透明マントの画像を重ね合わせたところ、劇場の柱とマントの各要素がほぼ正確に一致し、いずれも半径が小さくなるにつれて間隔が狭まる一連の同心円(半円)状に配置されていることが判明したのです。

古代ローマ人は気づかないうちに「耐震メタマテリアル」を使っていた? 劇場の基礎に隠された驚きの設計

さらにブリュレ氏は、ローマのコロッセオやその他の円形闘技場の基礎にも同じ法則が当てはまることを突き止めました。半円形の劇場とは異なり完全に閉じた形状を持つこれらの闘技場では、隣接する同心円(多くの場合は同心楕円)の半径の比率がほぼ同一だったことが、とりわけ注目に値します。

偶然か、経験の蓄積か

ローマ人がどのようにしてこの設計に到達したのかについては、ブリュレ氏は、地震多発地域で数世紀にわたり蓄積された経験をもとに、闘技場の構造を段階的に改良していった結果ではないかと推測しています。ただし、単なる幸運の産物だった可能性も否定できません。

フレネル研究所のセバスティアン・ゲノー(Sébastien Guenneau)氏は、この仮説を検証するためコンピューターシミュレーションを実施しましたが、実際の地盤の複雑さや、それが地震波の伝播に及ぼす影響を考慮すれば、実地での実験が不可欠だと指摘しています。同氏は、外径20メートル以上の同心楕円状に配置した埋め込み式コンクリート杭からなる模型の構築を目指しています。この規模であれば、軟らかい地盤を伝播する短波長の地震波に対して適切に機能するだろうと、同氏は説明しています。