考古学的発見

ワット・チャイモンコン・チェディ|タイ・トラートのラッタナコーシン朝初期の仏塔遺跡

ワット・チャイモンコン・チェディとは

ワット・チャイモンコン・チェディ(ワット・クラン・チェディとも呼ばれます)は、タイ東部トラート県にある放棄された仏塔(チェディ)遺跡です。現在はワット・クラン・チャイモンコンの境内東側、同寺の駐車場として利用されている一角に位置しています。

立地と周辺環境

遺跡一帯はトラート川の影響を受けた平坦な低地で、寺院の周囲は住宅が密集する市街地となっています。遺跡はクロン・バン・プラ運河の北約200メートル、トラート川の西約2.4キロメートルに位置し、海抜は約8メートルです。

仏塔の保存状態

このチェディは長年にわたり維持管理や保存措置が行き届かず、損傷が進んでいます。表面の漆喰はほぼすべて剥落し、鐘部(塔身)は傾斜しており、塔体の各所からは樹木が生育しています。

基本情報

  • 標高:海抜約8メートル
  • 水系:クロン・バン・プラ運河、トラート川、タイ湾
  • 地質:完新世の盆地性堆積物(ノララット・ブンカンパイ、2011年)
  • 考古学的時代:歴史時代
  • 時代・文化:ラッタナコーシン朝初期(ラーマ1世治世)
  • 遺跡種別:宗教施設

歴史的背景

ワット・クラン(現ワット・クラン・チャイモンコン)はマハーニカーヤ派に属する寺院です。寺伝によると、1782年(ラッタナコーシン朝創始期)に創建され、1958年1月24日にはウィスンカームシーマー(正式な戒壇の設置許可)を授けられました(タイ国家仏教庁、2022年)。

建築様式と構造

チェディはレンガと漆喰で築かれた、十二の角を凹ませた形式の仏塔ですが、表面の漆喰はほぼ完全に失われています。下部の基壇はラテライト(紅土)による方形プランで、その上はすべてレンガ造りです。獅子座(シンハ)基壇とみられる部分が2段続き、さらに上方に逆蓮華(蓮の鉢)と大きな蓮弁が配されています(蓮の鉢には他の部位より多く漆喰が残存)。その上に鐘部(ベル状の塔身)が載る構造で、頂部は崩壊して失われています。

塔の周囲の地面はセメントで舗装され、仏塔を取り囲むようにいくつかの大型石材が置かれています。これらの上には漆喰文様片も見られ、本仏塔から落下した装飾部材であると推定されます。また、石材の山には近代の建築資材が混在している点も指摘できます。

こうした建築様式の特徴から、このチェディはラッタナコーシン朝初期(ラーマ1世時代)の建立と推定されています。

周辺の遺構と現況

放棄された仏塔の東側には、中国様式の仏塔2基と中国式の祠堂が隣接しており、これらは高さ約120センチメートルの金網フェンスで囲まれた同一区画内にあります。周辺はワット・クラン・チャイモンコンの駐車場として利用されるほか、住宅や店舗など木造建築物の建設も進んでおり、遺跡を取り巻く環境は変化し続けています。