ワット・ムンムアンとは
ワット・ムンムアン(Wat Mung Muang)は、タイ北部チエンラーイ県チエンセーン郡の中心部に位置する廃寺跡の考古遺跡です。これまでに発掘調査と修復作業が行われ、遺跡公園として景観の整備も進められてきました。遺跡はパホンヨーティン通り(国道1016号線)沿いの北側にあり、現在では周囲を市街地のコミュニティに囲まれています。
立地と自然環境
標高は海抜379メートル。最寄りの水路はメコン川です。チエンセーンはメコン川の西岸に位置し、第四紀に堆積した砂や砂礫によって形成された広大なチエンセーン平野の上に展開しています。
時代と文化
考古学的には歴史時代に属し、時代・文化はランナー期、年代は仏暦20世紀(西暦14世紀末~15世紀頃)後半と考えられています。遺跡の種類は宗教施設です。
遺跡の由来
ワット・ムンムアンは古文書には登場しない寺院ですが、地元の人々からは「ワット・トントーン(Wat Ton Tong)」の名で呼ばれてきました。パホンヨーティン通りの向かい側にはワット・プラブアート(Wat Phra Buat)があり、両者は本来ひとつの寺院であったと推測されています。後に道路が敷設されたことで、境内が南北に分断されたものとみられます。
境内の主要建造物
境内の中心には、東向きの本堂(ウィハーン)の背後に主塔(チェーディー)がそびえ、その周囲をカムペーン・ケーオ(回廊壁)が取り囲んでいます。南側には拱門形式の「コーン門」と呼ばれる門が開かれていました。また、本堂の南側には礼拝堂(ウボーソット)と小規模なウィハーンが1棟ずつ建っています。
主塔(チェーディー)
レンガと漆喰で造られた城郭型のチェーディーです。基壇は正方形プランの板状基壇が3段積み重なる構成で、一辺は約7メートル。その上に蓮華座と、矩形平面の厨室(遺物納室)を支えています。厨室の四面にはアーチが開けられ、漆喰による装飾が施されています。下部は逆台形の基壇、上部は仰蓮華の意匠で、壁面にも蓮華と小型の仰蓮華が配され、上下の軒間には色ガラス(鏡)モザイクが嵌め込まれていました。頂部は八角形の基壇となり、四隅には小ストゥーパが飾られます。さらにその上に鐘部、小さな丸みを帯びた鐘部、薹座が続き、最上部は崩落して失われています。
本堂(ウィハーン)
レンガ造りで、間口14メートル、奥行20メートル、東向きの建物です。前面は吹き放ちの前室となり、木造の屋根は粘土瓦で葺かれています。壁は真壁構造で、内部にはチュクチー(仏像台座)あるいは台座が設けられ、漆喰製の仏像が安置されていました。
礼拝堂(ウボーソット)
小規模なレンガ・漆喰造りの建物で、西向きに建っています。南側の小ウィハーン(東向き、ウボーソットとほぼ同規模のレンガ・漆喰造り)と向かい合う配置です。
コーン門(メーコン門)
寺院の正門にあたる門で、カムペーン・ケーオ(回廊壁)の南側と東側(本堂の正面)に設けられた、レンガと漆喰造りの拱門形式の門です。
年代に関する考察
主塔の各部に見られる様式要素から、ワット・ムンムアンのチェーディーは仏暦20世紀後半に属すると推定されています。その形式は、チエンセーンを代表する「プラ・タート・ソーン・ピー・ノーン(姉妹塔)」や「ワット・パーサックのチェーディー」から発展したものと考えられています。