ワット・パレンとは
ワット・パレンは、タイ中部カンペーンペット県のアルニャック(Aranyik)地区に位置する廃寺です。北側の城濠から約364メートル北方、フワイ・サイから約187メートル北方、そしてピン川から約1,074メートル北方という内陸部に位置しており、古代都市カンペーンペットの宗教ネットワークの一翼を担っていたと考えられています。
立地と地形
標高は海抜約85メートル。周辺の水系としてはピン川とフワイ・サイが挙げられます。地質的には、地下にラテライト(紅土)の丘を形成する堆積層が分布しており、このラテライトは寺院の主要な建材としても盛んに使用されました。
築造年代と文化的背景
本遺跡は歴史時代に属し、スコータイ期からアユタヤ王朝前期、さらにはアユタヤ中期にかけて活動した寺院と推定されています。年代は仏暦20世紀〜22世紀(およそ西暦15世紀後半〜17世紀頃)に相当し、宗教施設としての性格を持つ考古遺跡です。
遺構の概要
寺院域はラテライトの塀で囲まれた二つのエリアに分かれており、遺構群はいずれもやや南東向きに配置されています。また、寺院周辺では井戸の跡や、ラテライトを採掘したとみられる穴の痕跡が確認されており、当時の建設活動や生活の様子をうかがわせる貴重な手がかりとなっています。主要な建造物は以下の通りです。
主仏塔(チェーディー)
鐘型のチェーディー(仏塔)です。基壇は宮殿の基壇に類似した方形プランをとり、東側には上下用の階段が2箇所設けられていました。その上方には八角形の基壇が3段積み重ねられ、八角形プランの蓮華座へと続く構造です。なお、塔の北部は現在までに完全に崩壊してしまっています。
礼拝堂
ラテライト造りの長方形の建物で、基壇はさほど高くない平らな形式です。その構造から礼拝堂(ウィハーン)であったと推定されており、昇降用の階段の痕跡は東側のみで確認されています。
まとめ
ワット・パレンは、スコータイ様式からアユタヤ様式への移行期を示す貴重な遺構を今に伝える廃寺です。ラテライトをふんだんに用いた堅牢な建築と、八角形基壇をもつ特徴的な仏塔は、カンペーンペットにおける中世仏教建築の変遷を知るうえで重要な存在といえるでしょう。