考古学的発見

幽霊犬の寺院(ワット・マー・ピーピー)|カムペーンペットに眠るスコータイ期の仏教遺跡

幽霊犬の寺院(ワット・マー・ピーピー)とは

ワット・マー・ピーピーは、タイ王国カムペーンペット県アラニク地区に位置する廃寺です。北側の堀から約306メートル北方、支流のホワイ・サイから約160メートル、そしてピン川から約980メートル北の場所にあります。かつてはスコータイ王朝の勢力下で栄えた宗教拠点の一つでした。

地形と立地条件

標高は海抜約86メートル。周辺にはピン川とその支流であるホワイ・サイが流れ、水運と農業の両面で恵まれた土地でした。地質的には、地下にラテライト(紅土)の丘を形成する堆積層が広がっており、このラテライトが寺院の主要な建材として使用されています。

考古学的背景

この遺跡は歴史時代に分類され、スコータイ期からアユタヤ前期、さらにアユタヤ中期にかけての文化圏に位置づけられます。建造年代は仏暦20世紀から22世紀(およそ西暦15世紀後半~17世紀半ば)とされ、長い年月にわたって信仰の中心であり続けたことがうかがえます。

寺院の構造と遺構

ワット・マー・ピーピーは矩形(長方形)の平面プランを持つ寺院で、ラテライト製の塀が仏域(ブッダワート)と僧域(サンガワート)を仕切り、全体は堀に囲まれていました。現在、僧域には建物の痕跡がほとんど残っていませんが、仏域には以下の重要な建造物が確認できます。

主塔(メイン・チェディ)

方形の基壇上に建つチェディで、基壇の四方中央には4基の小チェディが配置されています。主塔の基壇周囲にはアーチ型の壁龕(へきがん)が巡らされ、各面に5体ずつ、計20体の仏像が安置されていたと考えられています。残念ながら、チェディの頂部は完全に崩壊しており、当時の姿を留めていません。

本堂(ウィハーン)

ラテライト造りの長方形建築で、基壇は仰蓮(ぎょうれん)と呼ばれる上向きの蓮弁をあしらった優美な意匠です。壁のない開放的な七間形式のホール型堂宇で、前後両面に上下用の階段が設けられていました。

見どころと価値

ワット・マー・ピーピーは、スコータイ様式からアユタヤ様式への移行期を知るうえで貴重な遺跡です。ラテライトの積み方や壁龕の意匠、無壁のホール型ウィハーンなど、当時の建築技術と宗教観を今に伝える要素が多く含まれています。カムペーンペット歴史公園のアラニクエリアを訪れる際には、ぜひ足を延ばしてみたい静かな遺跡の一つです。

※本記事の情報は、ワティニー・タノンポンクラン氏による調査記録およびデータベースに基づいて編集しています。