ワット・パ・タムノック(Wat Pa Tam Nok)とは
ワット・パ・タムノックは、タイ王国カムペーンペット県のカムペーンペット旧市街北側に広がる「アラニク(Aranyik)」地区に位置する廃寺院です。この一帯はかつて森林僧院が点在した修行の場であり、現在はユネスコ世界遺産「スコータイと関連の歴史都市群」を構成するカムペーンペット歴史公園の一部として知られています。
立地と環境
寺院は東を正面とし、隣接するワット・プラノーン(Wat Phra Non)の南約50メートルにあたります。周辺との地理的関係は以下のとおりです。
- 旧市街の北側の堀から北へ約550メートル
- 小さな水路ファイ・サイ(Huai Sai)から北へ約180メートル
- ピン川から北へ約1.5キロメートル
標高は平均海面から約84メートル。地質的には、地下にラテライト(紅土)の丘を形成する堆積層が分布しており、この土地に豊富なラテライトが境内各所の建築材として用いられました。
年代と文化
遺跡の成立は歴史時代に属し、アユタヤ王朝初期から中期にかけて、仏暦20~22世紀(およそ西暦14世紀末~17世紀半ば)に宗教活動が行われていたと考えられています。宗教施設としての性格を持つ遺跡です。
主な建造物
境内には、東向きに配置された重要な建物が二つ確認できます。
主仏塔(チェーディー)
ラテライトを積み上げた仏塔で、現在は基壇部分のみが残っています。基部には蓮の花弁を表す基壇、珠状の飾り帯(ルーク・ケーオ)、鶏胸飾り(オッカイ)と呼ばれる曲面の装飾が施され、その上に八角形平面の基壇が八角形の蓮華座を支える構造となっています。残念ながら上部の鐘部は完全に崩落し、原形をとどめていません。
ウボーソット(戒堂)
主仏塔の東側に位置する、長方形平面のラテライト造建築です。周囲には葉型のセーマー(境界石)がめぐらされ、外観は講堂のような形式を呈しています。前面と背面にそれぞれ2基ずつ、計4基の階段が設けられていました。堂内には仏像を安置した台座の基壇が確認でき、ラテライト製の仏像台座は坐像用2基、立像用6基が見つかっています。
ワット・パ・タムノックは、崩壊が進んでいるものの、アユタヤ期におけるカムペーンペット北部の宗教活動の様子と、ラテライト建築の技術を今に伝える貴重な遺跡といえます。