考古学的発見

エジプト・ルクソールで戦争の女神セクメトの像8体を発見──3400年前のアメンハテプ3世葬祭殿から

女性の身体に雌ライオンの頭を持つ女神セクメトを表す像8体が、ファラオ・アメンハテプ3世の神殿で発掘された。

エジプト・ルクソールで戦争の女神セクメトの像8体を発見──3400年前のアメンハテプ3世葬祭殿から

ルクソール(古代テーベ)にある「百万年神殿」と呼ばれるアメンハテプ3世の葬祭殿で発見された女神セクメトの古代彫像。

伝説では、その口からは砂漠の風が吹き出すと語られてきた。約3400年前の強大なエジプトの女神セクメトの像8体が、「王たちの谷」近郊、テーベ(現ルクソール)に位置する古代エジプト最大級の葬祭殿──ファラオ・アメンハテプ3世(ギリシア語ではアメノフィス)の「百万年神殿」から出土したのである。

エジプト考古省によると、調査チームはアルメニア系ドイツ人の考古学者ホーリグ・スルジアン氏が率いる発掘作業の中で、これら黒花崗岩製の彫像を発見した。うち6体は玉座に着いた姿で、右手には生命の象徴であるアンク(十字架形の護符)を掲げており、残りの像は未完成か破損していたという。

テーベの山麓に南北700m、東西500mにも及んで広がっていたこの壮大な王家の神殿。その存在を今に知らしめているのは、ミレニアムの時を超えて残った2体の巨大なファラオ像──入口を守る「メムノンの巨像」、そして2000年代にスルジアン氏の調査隊が発見した高さ18mの巨像群だけなのである。

太陽の破壊力を人格化した戦争女神セクメト

エジプト・ルクソールで戦争の女神セクメトの像8体を発見──3400年前のアメンハテプ3世葬祭殿から

セクメト像(紀元前1370年頃)。ベルリン(ドイツ)の博物館所蔵。
出典:Altes Museum Berlin

長い衣をまとった女性の身体の上に獅子の頭を頂く姿で表されるセクメトは、戦争の女神として、宇宙を創造した太陽円盤の神ラーの復讐の道具たる「太陽の破壊的な力」を人格化した存在だった。

今回の像に加え、15年以上にわたりアメンハテプ3世神殿の保存作業に取り組んできた「メムノンの巨像」調査隊は、黒花崗岩から彫られた大型王室像の中央部分も出土させている。これは立姿のアメンハテプ3世を描いたものである。

エジプト史上最大級の彫像群

発掘作業開始以来、アメンハテプ3世神殿の境内からは、これまでに約108体ものセクメト像が見つかっている。これはエジプトで出土した彫像群の中でも最大規模の一つに数えられる。

現在は失われた柱廊(ペリスタイル)の周囲に配置されていたこれらの獅子頭の女神像は、当時、神殿の至聖所──司祭だけが立ち入ることを許された場所──に祀られた神なるファラオの像を守護していたと考えられている。

古代エジプト最盛期を築いた王

アメンハテプ3世は第18王朝第9代目のファラオである。アクエンアテンの父、そしてツタンカーメンの祖父にあたるこの王の40年に及ぶ治世(紀元前1391年〜紀元前1353年)は、古代エジプト史上もっとも繁栄した時代の一つだった。建築が黄金期を迎えた、もっとも洗練された時代でもあったのだ。