考古学的発見

ブーメランは凶器だった――13世紀オーストラリアの遺骨が証明する殺傷能力

13世紀のオーストラリア人の骨格に残された傷の分析から、ブーメランが持つ恐るべき殺傷能力が明らかになった。

ブーメランは凶器だった――13世紀オーストラリアの遺骨が証明する殺傷能力

カーキジャ遺跡近郊、オーストラリアのグンダブーカ国立公園の岩絵に描かれた戦闘用ブーメランの使用場面。

先史時代から伝わる投射武器

ブーメランといえば、投げると手元に戻ってくるオーストラリア先住民の道具を思い浮かべる人が多いだろう。しかし実際には、その歴史は先史時代にまでさかのぼり、中には戻らないタイプの「戦闘用ブーメラン」も存在した。相手に向けて放たれれば、人を殺めるほどの凶器となり得たのだ。今回取り上げるのは、まさにそれが起きたとみられる13世紀の事例である。舞台はオーストラリア・ニューサウスウェールズ州だ。

ブーメランは凶器だった――13世紀オーストラリアの遺骨が証明する殺傷能力

トゥーラレ国立公園のダーリング川河畔で発見された「カーキジャ男」の遺体。©Michael Westaway

「お兄さん」と呼ばれた男性の遺骨

キャンベラ北方、トゥーラレ国立公園のダーリング川河畔で発掘された埋葬遺跡からは、30代前後の若い成人男性の骨格が出土した。この人物は、現地バーカンジ(Baakantji)族の人々から親しみを込めて「お兄さん(Older Brother)」と呼ばれている「カーキジャ(Kaakitja)男」である。調査の結果、彼の骨には通常、金属製の武器によるものとされる外傷の痕跡が確認された。

鋭利な刃物が残したような切り傷が遺体に見つかったのは事実だが、驚くべきことに、これはヨーロッパ人入植者たちが金属製品とともにこの巨大なテラ・アウストラリス(南の大地)へ足を踏み入れる600年も前の出来事だった。つまり、金属器のない時代の木製武器によって負わされた傷なのである。

ブーメランは凶器だった――13世紀オーストラリアの遺骨が証明する殺傷能力

カーキジャ男の骨格に記録されたブーメランによる傷。©Michael Westaway

木製武器が残した骨折の痕跡

研究チームを率いたグリフィス大学(ブリスベン)の考古学者マイケル・ウェストアウェイ(Michael Westaway)氏は、次のように説明する。「これらの傷は、“Li-lil”、“Pondee”、“Mung-un buttaka”と呼ばれる伝統的な木製武器や、戦闘用ブーメラン“Wonna”によってつけられたものです」

学術誌『Antiquity』に発表された研究成果によれば、木製の刃がもたらした打撃のパターンは、頭蓋骨、前頭骨、下顎骨、右上腕骨、そして複数の肋骨に観察された骨折と正確に一致するという。

「古い傷もありますが、死に直結した傷もありました。これらの飛翔体が武器として使われた際の致死性が裏付けられたのです」とウェストアウェイ氏は述べている。

3600年前の犠牲者との共通点

過去にも同様の傷跡が報告されている。それは3600年前に埋葬された「ナラビーン(Narabeen)男」の遺骨で、こちらでも槍やブーメランによる傷が確認されていた。こうした傷については、部族間の激しい武力衝突を記録した民族誌の資料にも言及がある。

ブーメランは凶器だった――13世紀オーストラリアの遺骨が証明する殺傷能力

オーストラリア南部で使われた各種のブーメランと木製武器。©Michael Westaway

岩絵に描かれた戦いの記憶

こうした戦闘の場面は、オーストラリア各地の岩陰遺跡に描かれた岩絵にも見ることができる(冒頭写真)。カーキジャ遺跡近郊、グンダブーカ国立公園の岩絵には、戦闘用ブーメランを使う戦士たちの姿が描かれている。

ウェストアウェイ氏はこう続ける。「狩猟用や戦闘用のブーメランは、現在一般に知られているものよりはるかに大きくて重く、湾曲も大きく、刃はサーベルを思わせるほど鋭利でした」

人を殺すために作られた戦闘用ブーメラン。それはまさに、致命的な武器だったのである。