タイ中部のジャングルに隠された洞窟で、2000年以上前に描かれたとみられる洞窟壁画が、考古学者たちの手によって発見されました。単独のレイヨウ、謎めいた人影、手をつなぐ家族――こうした図像が岩肌に描かれていたのです。タイ国内でも珍しい発見として大きな注目を集めています。
「大声で叫んでしまいました」
バンコクから南西へ約4時間、サムローイヨット国立公園。40歳の考古学者カニガ・プレムジャイさんは、棘のある藪を掻き分けながら丘を登り、頂上の洞窟へと入っていきました。そして懐中電灯の光で照らし出したのが、石に刻まれたレイヨウの角でした。
「最初は壁に付着した錆だと思っていました」とAFP通信に語るプレムジャイさん。しかし、考古学調査用のスマートフォンアプリを使ったところ、すぐにそれが絵画であることを見分けることができました。「私は大声で叫んでしまいました」。2020年5月14日のこの発見は、40もの洞窟を探索しても成果が出なかった数か月に及ぶ調査に、ようやく報いてくれるものでした。
旧王朝の都、クメール時代の都市、数々の寺院――タイはこれまで多くの遺跡を発掘してきており、コロナ禍以前は毎年数百万人規模の観光客を引きつけてきました。
しかし、洞窟壁画の探索ははるかに困難です。遺跡へのアクセスが悪いうえ、調査を担当するタイ芸術局は人員不足に悩まされています。ラーチャブリー支部(南部)では6つの県を管轄しながら、プレムジャイさんを含むわずか3人の考古学者チームがこの種の発掘に当たっているだけなのです。
東南アジア考古学芸術センターのノエル・イダルゴ・タン氏は「タイでの仕事の大部分は、すでに見つかったものを保存することです」と説明します。「それでも、まだ未調査のサイトはたくさんあります」。「何に出会えるかわかりませんよ」とプレムジャイさんは言いながら、洞窟の別の部屋へと進んでいきます。隅々まで、あらゆる崖、あらゆる空洞を調べ尽くさなければならないのです。
「壁画を見つけるのは宝掘りのよう」
2016年、当局はサムローイヨット公園一帯で最初の壁画を確認・登録しました。これを受けてプレムジャイさんはさらなる調査を進め、今回の発見に至りました。この発見は、この地域に古代の人類が存在していたという当初の仮説を裏付けるものとなっています。
イダルゴ・タン氏によれば、狩猟採集民は約3000年前にこの地域で暮らしていました。季節に応じて「キャンプからキャンプへと移動し、山の中にあるこの洞窟は彼らの拠点の一つだった可能性があります」と同氏は語ります。
一方で専門家は、遺跡の保存を懸念しています。「洞窟を守るには資金が必要ですが、残念ながら古代寺院や宮殿ほどの収益は期待できません」。また、アクセスの難しさから、観光客向けに簡単に公開することもできません。
それでもプレムジャイさんの情熱は衰えません。「壁画を見つけるのは宝掘りのようです(…)考古学の魅力は、決して退屈しないことなんです」。
なお、サムローイヨットの壁画がタイ最古というわけではありません。北部の遺跡からは、5000年から1万1000年前に人が居住していた場所で、さらに古い壁画が発見されています。