考古学的発見

ロンドンで発見された約1万年前の先史時代のキャンプ跡

ロンドンで発見された約1万年前の先史時代のキャンプ跡

典型的な先史時代の火打石(フリント)製の石器(ナイフ)。※写真はロンドンのキャンプ跡から出土したものではありません。

大地と時間が眠らせていた貴重な遺産

イギリスでは、大地と長い時の中に眠っていた貴重な遺産が、今もなお次々と姿を現しています。考古学調査の進展により、首都の地下からも古代の人々の暮らしを物語る手がかりが相次いで発見されており、ロンドンの歴史は文字通り「地下」に刻まれているのです。

遊動する狩猟民たちの生活の痕跡

このたびロンドンで発見されたのは、約1万年前にさかのぼる遊動性の狩猟採集民によるキャンプ跡でした。これは氷河期が終わった直後の中石器時代にあたり、まだ農耕が始まる前、人々が自然の恵みを求めて移動しながら生活していた時代のものです。

遺跡からは、当時の人々の日々の習慣や道具の使い方を知るうえで非常に興味深い遺物の数々が出土しています。その代表が、先史時代の典型的な道具である火打石(フリント)製の石器です。鋭い刃を持つこれらの石器は、獲物の解体や皮の処理、木の加工など、生活のあらゆる場面で使われていました。

さらに注目すべきは、焚き火の跡まで確認されたことです。火の使用の痕跡は、彼らがここで食事をとり、暖を取り、道具を作りながら一定期間滞在していたことを示唆しており、キャンプ地としての性格を裏付ける重要な発見といえます。

謎めいた遺物――漁に使われた餌か?

また、遺跡からは正確な用途が特定できていない不思議な物体も1点見つかっています。研究者の間では、これが魚釣りに用いる餌(仕掛け)として使われた可能性があると考えられています。もし確定すれば、当時の人々が狩猟だけでなく漁撈にも熟練していたことを示す貴重な証拠となります。私たちの祖先は、川や湿地に恵まれた環境を生かして、多様な方法で食料を得ていたのです。

小さな石器や灰の痕跡といった一見ささやかな発見の積み重ねが、1万年前のロンドンにおける人類の営みを少しずつ明らかにしていきます。都市の地下には、私たちの知らない先史時代の物語が今も静かに眠っているのです。(写真提供:mav.mk)