古代エジプト人がピラミッド建造に用いた花崗岩は、エジプト各地に点在する複数の採石場から切り出されたものです。中でも特に有名で、大規模に採掘が行われていたのが以下の場所です。
アスワン――「花崗岩の都」
エジプト南部に位置するアスワンは、良質な赤花崗岩の豊富な埋蔵量により、「花崗岩の都」として広く知られています。ここで産出される花崗岩は、ピラミッド、神殿、オベリスクといった大型建造物の建設に盛んに使用されました。ギザのピラミッド群、とりわけクフ王の大ピラミッドでは、アスワン産の花崗岩が「王の間」などに使われています。
アブ・シンベル
同じくエジプト南部にあるアブ・シンベルも、重要な石材供給地の一つでした。この地は、ラムセス2世が一体の山を丸ごと削り出して造営した二つの巨大な岩窟神殿で特に有名です。周辺で産出される石材は、赤みを帯びた美しい色合いと高い耐久性で珍重されました。
モンス・クラウディアヌス
エジプト東部砂漠に連なる山地モンス・クラウディアヌスは、ローマ時代における主要な採石場でした。道路、神殿、記念碑など、さまざまな建設プロジェクト向けに花崗岩が切り出され、各地の工事現場へと送り出されました。
ゲベル・エル=アフマル
アラビア語で「赤い山」を意味するゲベル・エル=アフマルは、カイロ近郊に位置します。特に古王国時代において赤色系の硬質石材の重要な供給源となり、柱、まぐさ(梁)、装飾部材など、数多くの建築要素がここの石材で作られました。
巨石文明を支えた採石場たち
これらの採石場は、古代エジプトの巨大建造物を建てるために必要だった膨大な量の花崗岩を供給するうえで、極めて重要な役割を果たしました。巨大な花崗岩ブロックを採掘し、運搬し、加工するには、高度な技術、工学知識、そして綿密な組織的協力が不可欠でした。ナイル川を利用した船による輸送や、そりを使った陸上搬送など、当時のエジプト人たちは卓越した物流システムを駆使して、重い巨石を遠く離れた建設現場まで運んだのです。