人類が狩猟採集から農耕へと移行した新石器時代。科学者たちは、中東を中心とする各地の遺跡から、当時の農村生活を示す貴重な証拠を発見してきました。本記事では、特に重要な3つの農耕集落——チャタルヒュユク、エリコ、アリ・コシュについて、その立地や歴史、出土した証拠の内容を詳しくご紹介します。
1. チャタルヒュユク(Çatalhöyük)
チャタルヒュユクは、アナトリア南部(現在のトルコ)に位置する、世界最古級の農耕集落の一つです。
- 立地: アナトリア南部(現在のトルコ)
- 成立時期: 紀元前7500年頃
- 人口: 約5,000人
遺跡からは、小麦・大麦・レンズマメなどの栽培を示す農耕の証拠に加え、牛・羊・山羊などの家畜を飼育していたことを裏付ける畜産の痕跡も見つかっています。住居は日干しレンガを積み上げた平屋根の建物で、興味深いことに、死者は家の床下に埋葬されるという独特な習慣がありました。
この集落は紀元前5700年頃に放棄されたと考えられており、その原因は気候の変化だった可能性が指摘されています。
2. エリコ(Jericho)
エリコは、ヨルダン川西岸地区に位置する、世界で最も古くから人が住み続けてきた都市の一つです。
- 立地: ヨルダン川西岸地区
- 成立時期: 紀元前9000年頃
- 人口: 約2,500人
エリコでは、小麦・大麦・ナツメヤシなどの農耕の証拠や、牛・羊・山羊といった家畜の飼育の痕跡が確認されています。住宅は日干しレンガ造りで平屋根を持ち、死者は洞窟内や家屋の床下に埋葬されました。
エリコは長い歴史の中で幾度となく破壊されましたが、そのたびに再建され、都市としての命脈を保ち続けました。この驚くべき復興力こそが、エリコを特別な存在にしているのです。
3. アリ・コシュ(Ali Kosh)
アリ・コシュは、イラン南西部のフーゼスターン州に位置する新石器時代の集落遺跡です。
- 立地: イラン南西部・フーゼスターン州
- 繁栄期: 紀元前7200年〜6400年頃
この遺跡からは、長方形の建物の跡や、多様な手工芸品のほか、穀物や豆類の栽培、さらに羊・山羊・牛などの家畜を飼育していたことを示す豊富な証拠が出土しています。これらの発見は、初期農耕社会における生業の多様性を物語るものです。
まとめ
チャタルヒュユク、エリコ、アリ・コシュの3つの遺跡は、いずれも新石器時代の人々がすでに高度な農耕と牧畜を行っていたことを示す重要な証拠を提供しています。埋葬習慣や建築様式にもそれぞれの特色が見られ、人類史上における「定住革命」の実像に迫る貴重な手がかりとなっています。