偽証に囲まれた金細工師の裁判
ある金細工師が、女性の家に姦通目的で侵入したとして告発されました。原告側が仕組んだ偽証者たちの証言は非常に強力で、その主張を崩すことはほぼ不可能な状況でした。このままでは有罪は避けられない——そう悟った金細工師は、弁護士としてヴァラブバーイ・パテール(後の「サルダール・パテール」)を依頼します。
居眠りする判事と、代わりに審理する助手
パテールは通常の弁論では勝てないと判断し、別の方法を取ることを決めました。実は、この裁判を担当するイギリス人判事は、毎日酒を飲んでから法廷に現れ、控室の椅子に座ったまま居眠りをしてしまう人物だったのです。実際に事件の審理を進めていたのは、彼の助手でした。
金細工師の事件の審理も、例によって助手が始めようとしました。そこでパテールはこう主張しました。
「本件を審理する権利を持っているのは、判事ご本人だけです」
酔った判事への「お世辞」作戦
これを受けて、判事はようやく控室から法廷へと現れました。しかし、酔いのため言葉の半分ほどしか理解できない状態です。それこそが、まさにパテールの狙いでした。
パテールは判事に向かって、こう語りかけます。
「わが国のような後進的で保守的な社会では、この種の出来事は悪事と見なされます。しかしあなた方の先進的で近代的な社会においては、それは犯罪ではないのです」
自らの社会を褒め立てる言葉に、イギリス人判事はすっかり上機嫌になりました。被告側の弁護人がイギリス人を称賛していることは容易に理解できました。そして同時に、こうも考えたのです。
「イギリス人にとって悪くないことが、なぜインド人にとって悪くなければならないのか」
覆らない評決
こうして判事は、金細工師を放免しました。判事の助手も原告側の弁護士も全力で食い止めようとしましたが、酔った判事は繰り返すばかりでした。
「イギリス人にとって犯罪でないものが、どうしてインド人にとって犯罪になろうか!」
後にインド独立の立役者の一人となるヴァラブバーイ・パテールは、弁護士時代からこのような鋭い観察眼と機転によって、数々の難事件を解決してきたことで知られています。