行進曲(マーチ)は、規則的で力強いリズムが特徴の楽曲で、クラシックから映画音楽まで幅広いジャンルで親しまれています。歴史上、数多くの作曲家が行進曲を残してきました。ここでは、特に有名な作曲家たちとその代表作品を、時代ごとにご紹介します。
古典派までの作曲家
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685〜1750)
対位法とフーガの名手として知られるバッハも、行進曲をいくつか残しています。『アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳』に収められたニ長調の行進曲(BWV Anh. 122)などが代表的で、簡素ながらも洗練された作風が魅力です。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791)
モーツァルトはオペラやセレナードの中に数多くの行進曲を書き込みました。中でもピアノソナタ第11番イ長調(K. 331)の第3楽章「トルコ行進曲」は、軽快なリズムで世界的に有名です。また、歌劇『後宮からの逃走』の終幕には、華やかな「トルコ風フィナーレ」が登場します。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770〜1827)
ベートーヴェンの行進曲は、劇的で英雄的な性格を持つことで知られます。ピアノソナタ第12番変イ長調(Op. 26)の第3楽章「葬送行進曲」は特に有名で、後世の作曲家たちに大きな影響を与えました。
ロマン派の作曲家
フランツ・シューベルト(1797〜1828)
シューベルトは吹奏楽やピアノ連弾のために多数の行進曲を作曲しました。「軍隊行進曲」(D. 733)は、明快でエネルギッシュな旋律が魅力の人気作品で、日本でも演奏会で頻繁に取り上げられています。
ジョン・フィリップ・スーザ(1854〜1932)
「行進曲王」と呼ばれたアメリカの作曲家・指揮者です。100曲以上の行進曲を作曲し、1896年の「星条旗よ永遠なれ」はアメリカの国家行進曲とされています。「ワシントン・ポスト」「士官候補生」など、今なお吹奏楽の定番として愛演され続けています。
エドワード・エルガー(1857〜1934)
イギリスを代表する作曲家エルガーの「威風堂々」(行進曲第1番)は、中間部の美しい旋律が卒業式や式典の音楽として世界中で愛されています。イギリスでは第二の国歌とも称される国民的名曲です。
リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)
後期ロマン派の巨匠シュトラウスは、祝祭的で壮麗な管弦楽曲を得意としました。祝祭行進曲のほか、交響詩『英雄の生涯』には戦いを描いた行進曲風の場面が登場し、豪華絢爛な音響が特徴です。
グスタフ・ホルスト(1874〜1934)
ホルストは、軍楽隊のための組曲第1番変ホ長調の終楽章「行進曲」など、吹奏楽レパートリーの礎となる作品を書きました。組曲『惑星』の「火星」も、重厚なリズムが生み出す緊迫感によって行進曲的な性格を持つことで知られています。
近現代・映画音楽の作曲家
イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882〜1971)
ストラヴィンスキーの行進曲は、複雑なリズムと大胆な和声が特徴です。恩師リムスキー=コルサコフを追悼して書かれた初期の「葬送行進曲」(1908年)のほか、舞台作品『兵士の物語』の「王様の行進曲」など、独自の語法による行進曲を多数残しています。
セルゲイ・プロコフィエフ(1891〜1953)
プロコフィエフは映画音楽やバレエ、劇付随音楽の中で数々の行進曲を書きました。映画『キージェ中尉』(1934年)のための「行進曲」は、ユーモアと気品を兼ね備えた軽快な名曲で、組曲版としてコンサートでも高い人気を誇ります。
ハンス・ジマー(1957年〜)
現代を代表する映画音楽作曲家の一人です。『グラディエーター』(2000年)の戦闘シーンで使われる壮大な行進曲風の楽曲をはじめ、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどでも勇壮なマーチ的楽曲を手掛け、現代の映像音楽における行進曲の表現を大きく広げています。
まとめ
このように、行進曲はバロック時代から現代の映画音楽まで、時代やジャンルを超えて多彩な姿で作曲されてきました。クラシックの名曲からスクリーンで響く壮大なマーチまで、ぜひさまざまな行進曲を聴き比べてみてください。