読書の歴史は、20世紀後半における歴史学研究の最も重要な流れの一つであり、歴史を理解するための豊かな研究領域を切り拓いてきました。

文:クラウディオ・フェルナンデス
「新しい歴史学」と読書史の誕生
読書の歴史が実り多い研究分野となったのは、1970年代以降のことです。その契機となったのは、フランスで発展した「新しい歴史学(ヌーヴェル・イストワール)」と呼ばれる歴史編纂の潮流でした。この新たな歴史学、すなわち文化史的アプローチの登場により、歴史学は従来とは異なる研究対象、アプローチ、問題意識へと関心を広げていきました。その新たな「対象」の一つこそが「読書の実践」だったのです。つまり、人類史のさまざまな時代において、読書という営みがそれぞれの時代の社会的構築に応じて変容してきたことを明らかにしようとする試みでした。
「新しい歴史学」のアプローチは、類型化された一般論的な過去分析にとらわれた旧来の歴史研究の枠組みを打破することを目指しました。そうした画一的な分析では、人間集団が置かれていた多様な状況の空気感を捉えることができなかったからです。それを捉えるためには、「実践の歴史」へと研究の視点を向ける必要がありました。
記録媒体が読書のあり方を形作った
読書実践の歴史は、文字を記す媒体(支持体)の歴史と密接に結びついています。古代メソポタミアの楔形文字が刻まれた粘土板から、コンピュータモニター上の仮想の文字まで、パピルスの巻物、コデックス(冊子)、石に刻まれた文字、革に記された文字など、その形態は多岐にわたります。これらの媒体は、各時代における読書のあり方を決定づけ、あるいは決定的に形作ってきました。
例えば古代社会では、文字の使用は司祭や書記といった階層的な職能に就く人々の特権でした。そのため、読書は定義上、口頭かつ集団的な実践でした。大勢の人々に対して声に出して読み上げられたのです。多くの場合、文学作品は丸ごと暗記されていました。アテネの子どもたちの教育では、ホメロスの叙事詩の一節を暗唱することがその典型例です。
黙読の誕生――中世の修道士たち
一方、黙読の実践、すなわち個人が静かに一人で読む習慣は、中世の写本制作に携わる修道士たちのもとで初めて生まれました。これは偶然ではなく、彼らが置かれた特定の状況ゆえの産物でした。古典(ギリシャ・ローマ)やキリスト教の写本を複製し、コデックスを彩飾(イルミネーション)で装飾する義務を負った修道士たちは、慎重な読解と正確な作業に適した静寂な環境を必要としていたのです。以来、黙読の習慣は次第に世俗化し、15世紀のグーテンベルクによる活版印刷術の発明以降、とりわけ一般的なものとなっていきました。

彩飾を施された中世のコデックス
大衆化する読書とフランス革命
18世紀に入ると、文学におけるロマン主義の勃興と、ヨーロッパ各地の都市で開かれる書籍市の隆盛により、読書は社会に大きな影響力を持つ真に大衆的な習慣へと発展しました。啓蒙思想の政治パンフレットや哲学書の読書が、フランスのブルジョワジーを1789年の革命行動へと大きく駆り立てたことは、その好例といえるでしょう。
ロジェ・シャルティエと「解釈共同体」
読書史研究を代表する歴史家の一人であるロジェ・シャルティエは、読書実践が歴史上の「解釈共同体」に与えた影響の解明に生涯を捧げました。今日私たちが読書と結んでいる関係もまた、コンピュータ画面やインターネットといった技術に依存した社会的習慣の構築と密接に結びついているのです。