本やテレビでスフィンクスの姿を目にするとき、誰もが気づいてしまうことがあります。そう、彼女には鼻がないのです。優れた建築技術を持つ古代エジプト人が、最初から鼻のない像を建造したはずがありません。つまり、鼻は後になって失われたことになります。では、いったい何が原因だったのでしょうか。
鼻を失った原因とは?
長い歳月をかけて進んだ風化作用によるものなのでしょうか。それとも、空を引き裂くような巨大な落雷によるものだったのでしょうか。実は、どれも違うようです。有名な言い伝えによれば、エジプト遠征中にイギリス軍と戦ったナポレオンの砲撃によって、鼻は吹き飛ばされてしまったのだといわれています。砲弾が見事に標的を外した結果、悲劇は起こったというわけです。
本当にナポレオンが犯人なのか?
しかし近年では、ナポレオンに罪を着せるのは不当だとする見方も広がっています。一説には、フランス軍と戦ったマムルーク(騎馬兵)側の砲撃が原因だった可能性もあるとされます。
さらに興味深いことに、歴史資料をたどると、ナポレオンのエジプト遠征(1798年)より前に描かれたスフィンクスのスケッチには、すでに鼻のない姿が記録されています。また、15世紀のアラブの歴史家マクリーズィーの記録によれば、1378年頃に宗教的な理由から顔を削り取った人物がいたとも伝えられており、真相は今なお謎に包まれています。
いずれにせよ、スフィンクスの鼻を「手術」して取り去ってしまったのが誰であれ、本来の姿は今よりもずっと立派なものだったはずです。失われた鼻は、この古代の巨像に数百年分のミステリーを添えることとなりました。
豆知識
ギザの大スフィンクスは高さ約20メートル、全長約73メートルに及ぶ、世界最大級の石造彫刻として知られています。鼻だけでなく、儀式用のひげの断片は大英博物館などに所蔵されており、かつての壮麗な姿をしのばせてくれます。