トロピカリア(Tropicalismo、熱帯主義)は、1960年代後期にブラジルで花開いた文化運動です。既成概念にとらわれない反骨精神、奔放な表現、そして即興性を大きな特徴とし、その中心的存在となったのは音楽家のカエターノ・ヴェローゾとジルベルト・ジルの二人でした。
運動の幕開け
トロピカリアは1967年、テレビ局「TVレコード」が主催するMPB(ブラジルポピュラー音楽)フェスティバルにおいて、ジルの「Domingo no Parque(日曜日の公園で)」とカエターノの「Alegria, Alegria(喜び、喜び)」という2曲が発表されたことを機に、本格的に始動しました。
大きな論争を巻き起こした楽曲
これらの楽曲は、ブラジル芸術への外国からの影響を拒絶していたナショナリスト的な大学中産階級の間で激しい論争を引き起こしました。しかしこの物議を醸したこと自体が、トロピカリアという新しい潮流を広く世間に知らしめる結果となったのです。
音楽を超えて広がった影響力
トロピカリアの影響は音楽の枠にとどまらず、美術など他の芸術分野にも及びました。その代表例として、1965年の彫刻作品「Tropicália(トロピカリア)」が挙げられます。このように運動は、ブラジルの文化的アイデンティティを多方面から問い直す存在となりました。
運動の終焉と亡命
トロピカリアは1968年12月、第5号制度法(AI-5)の発布によって事実上の終焉を迎えます。この法令は軍事政権による言論弾圧を強化するものであり、運動の指導者であるカエターノとジルは逮捕されたのち、イギリスへと亡命せざるを得ませんでした。こうして短命に終わったものの、トロピカリアがブラジル現代文化に残した足跡は計り知れず、後世のミュージシャンやアーティストたちに多大な影響を与え続けています。