猫という存在が映し出す人間の姿
猫は、無関心ではいられない生き物です。そのしなやかな動きと神秘的な瞳は、ある人々には深い愛着を呼び起こし、別の人々には強い嫌悪感を抱かせてきました。歴史を振り返ると、猫への態度はそのままその人物の人間性や時代の空気を映し出す鏡となっています。
ルネサンスの天才レオナルド・ダ・ヴィンチは、「最も小さな猫でさえも、ひとつの芸術作品である」と語ったと伝えられています。一方で、古代マケドニアの征服者アレクサンドロス大王は猫を極端に嫌い、その姿を目にしただけで気絶してしまったとも言われます。フランス皇帝ナポレオンもまた、猫に触れたことのある人間を前にすると慌てて避けたという逸話が残っています。
猫を虐殺させた教皇
中世ヨーロッパにおいて、猫は悪魔の使い魔として恐れられていました。13世紀の教皇グレゴリウス9世は、異端者たちが猫を崇拝しているとする教書「Vox in Rama(ラーマの声)」を発布したとされ、これがきっかけで各地で猫の大量虐殺が行われたと考えられています。
皮肉なことに、この猫狩りはネズミの増加を招き、ペスト(黒死病)の大流行の一因になったとも指摘されています。迷信がもたらした悲劇として、歴史に深い教訓を残しています。
猫が燃えるのを眺めるのが好きだった王
中世から近世にかけてのフランスでは、夏至の祭りなどで生きた猫を籠に入れて火あぶりにするという残酷な行事が行われていました。記録によれば、国王シャルル9世や王妃カトリーヌ・ド・メディシスが、こうした猫焼きの祭典を観覧して楽しむ姿が目撃されています。
権力者たちにとって、それは単なる見世物でしたが、今日の目で見れば想像を絶する野蛮さです。猫に対する人間の態度が、時代とともにどれほど変化してきたかを物語るエピソードといえます。
猫を愛した歴史上の人物たち
一方で、猫を心から愛した著名人も数多く存在します。イギリスの首相ウィンストン・チャーチルは晩年、愛猫と共に過ごす時間を何よりも大切にしました。小説家チャールズ・ディケンズやマーク・トウェインも有名な猫好きとして知られ、トウェインは「猫を家に招き入れると、その家の自由が失われる」と冗談めかして語ったといいます。
また、フランスの宰相リシュリュー枢機卿は政務の合間に愛猫たちと過ごし、エジプトでは猫は神聖な動物として崇拝され、飼い主が死ぬと家族同様にミイラにされたほどです。
猫との関わりが語るもの
愛する者も、憎む者も、崇める者も――猫をめぐる人間の営みは、まさに千差万別です。ダ・ヴィンチの言葉通り、猫は小さな芸術作品でありながら、その存在をめぐって歴史には光と闇の両面が刻まれてきました。18人の歴史人物たちの逸話は、猫という身近な生き物を通じて、人間社会の移り変わりを雄弁に語ってくれるのです。