歴史物語

古地図100枚が語るオランダの歴史

歴史地図ファン待望の一冊

古地図や歴史地図の愛好家にとって、新たな「必携書」となる一冊が登場しました。その名も『オランダの歴史を100枚の古地図で』(原題:De geschiedenis van Nederland in 100 oude kaarten)。本書の最大の特徴は、地図そのものではなく、重要な歴史的出来事を主軸に構成されている点にあります。

例えば、ローマ人が有名な道路網を築いたのは主に地中海地域だったことをご存じでしょうか。オランダは帝国の辺境に位置していたため、ローマの道路建設者たちからはあまり関心を向けられず、当地にはそれ以前の先史時代の道が数多く残されていました。4世紀のローマ街道網の地図を読む際、こうした歴史的背景を知れば、題材がぐっと生き生きと浮かび上がります。これは、新刊『オランダの歴史を100枚の古地図で』に収録された100枚のうちの、ほんの一枚にすぎません。

世界の中心アムステルダム

本書は、王立図書館(コーニンクレッカ・ビブリオテーク)の古版本キュレーター、マリーケ・ファン・デルフト氏と、アラール・ピアソン博物館の地図学キュレーター、ラインデル・ストルム氏によって大部分が執筆されました。この著者夫妻は、地図を手がかりにオランダ史全体の概観を提示し、あらゆる分野を網羅することを目指しています。

黄金時代を22枚もの地図で占め、アムステルダムの地図製作者たちがやや目立つ形になったことを、著者に責めることはできません。17世紀において、アムステルダムは地図学とその制作者たちにとって、文字通り世界で最も重要な場所だったのですから。

いずれにせよ、本書は「最も重要な地図」や「著名な地図製作者」の概観ではありません。選定の軸となったのは歴史的テーマであり、著者らはそれらを最もよく描き出せる地図を探し求めました。その結果、地形図だけでなく、社会的テーマを扱った地図も豊富に収録されています。中には、現代で広く使われるインフォグラフィックの先駆けとも言える作品まで含まれています。ストルム氏によれば、こうした地図は必ずしも地図学的に正確ではないものの、特定の主題を描写したり、社会的なメッセージを発したりすることを目的としているのだそうです。

一例として挙げられるのが、1898年の地図です。これは、オランダで女性が従事している産業の種類を、男性の数と比較して示したもの。第一次フェミニズム運動の時代であり、女性労働者の賃上げなどを求める闘いが繰り広げられていました。同年、この地図はハーグで開催された「女性労働国際博覧会」の入口に掲げられ、働く女性たちがオランダ経済に占める割合の大きさを訴えたのです。

はじまりの時代

100枚の地図は、それぞれが独立した章を形成します。各章では、大きな地図が見開き2ページにわたってカラーで掲載され、続く2ページには歴史的情報をまとめた解説文が置かれています。著者らは地図の歴史的背景を明快に描き出しており、最新の研究成果への言及など、科学的根拠を重視する姿勢もうかがえます。例えば、1526年製作とされるオランダ最古の地図の一部は、2012年になってようやく、16世紀の世界史書の中から発見されました。

タイムラインは紀元69年、バタウィ人から始まります。「オランダ最古の住民」というやや奇妙な見出しが付けられており、まるで69年以前にこの地に人が住んでいなかったかのような印象を受けますが、それはさておき。この時代の地図は存在しないため、バタウィ人がオランダの歴史において強い想像力を呼び起こしてきたことから、ここでは17世紀に再現された「バタウィ人時代のオランダ」の復元図が掲載されています。

もちろん本書は地図帳でもあるため、低地諸国における実用地図学の始まりにも触れられています。16世紀まで地図がほとんど作られなかったのは、「ある場所から別の場所への道や畑の形といった空間的関係を示すスケッチを描くという発想自体が、中世の人々にはほとんどなかった」からだと著者らは説明します。

そのため、1307年頃の日付を持つオランダ最古の地図は、現代の目には奇妙に映ります。それは説明文付きの、非常に模式的な地域表現です。初めて画像を見たとき、それが地図だとは気づかず、ただの土地の記述だと思ってしまったほどです。

本書では、1500年以前にオランダを描いたことが知られる16枚の地図のうち、いくつかが紹介されています。1490年のスヘルデ川の地図は、4世紀のローマ街道地図を多少思い起こさせます。こちらも縦長の巻物状の地図だからです。しかし千年以上の時を経て、今度は私たちが追うのは、交易路として機能した水路です。オランダの多くの都市が水辺に位置し、初期の地図が水路を主題としてきたのも無理はありません。19世紀まで、モノも人も主に水路で運ばれていたと著者らは述べています。もし大動脈となる幹線道路がなかったら、この国はどんな姿になっていたのでしょうか。想像するのはほぼ不可能です。

「平均的なオランダ」なのか?

100枚の地図を眺めながら、ふと考えます。この本は、オランダ全体の歴史をどれほど代表しているのだろうかと。すべてのオランダ人が自分の歴史をこの中に見出せるのか。タイムラインは1953年の洪水災害で終わっており、それ以降の歴史は最初から対象外です。この選択が本書にどこかノスタルジックな趣を与え、「古き良きオランダ」の反映となっています。オランダ史に対する私たちの色眼鏡のかかった見方をめぐる、歴史家間そして社会全体での議論は、本書では後付け程度の扱いにとどまっており、著者らはここでもっと踏み込めたはずです。

例えば奴隷制廃止はタイムラインに記載されているものの、それを扱う地図はありません。奴隷制時代のキュラソーとスリナムについては確かに触れられており、後者には1770年に植民地内の全プランテーションを示した地図が添えられていますが、本文での扱いは最小限です。蘭領東インドにおける奴隷制についても、ほとんど読むことができません。

一方で、考えてみてください。最重要の歴史的出来事を100枚の地図で捉えようとするのです。もちろん無理な話です。出来事はもっと多いのですから、批判は必ず生じます。とはいえ、画像と充実したコンテキスト解説の組み合わせは見事に機能しています。カラー地図に加えて、多彩な図版が歴史的テーマを彩る、美しく教養深い一冊であることは間違いありません。

取り上げられる機会の少ない地域もあります。例えばフリースラントやリンブルフです。カール大帝時代のフリース人王国「マグナ・フリシア」には言及がなく、また著者らは制作の終盤になってリンブルフに関する内容がないことに気づき、慌てて炭鉱の地図を選んだとのことです。とはいえ全体として、この分厚く美しくデザインされた本は、著者夫妻の愛情が込められた作品であることは明らかです。

地図学の年

本書が今出版されるきっかけとなったのは、2年に一度開催される歴史地図学の国際学術会議です。今年の夏、アムステルダムがホストを務めることに合わせ、王立図書館とダム広場の王宮が、所蔵する最も美しく重要な地図による展示会を企画しました。そして当然ながら、王立図書館とアラール・ピアソンによる共同制作である本書こそが、その締めくくりを飾る存在です。

これらの地図についてさらに詳しく知りたい方には、巻末に各章ごとの参考文献が用意されています。また、2019年7月16日まで、王立図書館で開催中の展示会「Masterpieces(傑作)」を訪れることもできます。筆者も足を運びましたが、脆弱な地図を守るために照明を抑えた薄暗い展示ホールには、縦横に交差するように展示ケースが並べられ、本書収録の地図から厳選された品々が、隣に設置された照明付きスクリーンの解説とともに展示されています。歴史地図は、実物を目にするとさらに楽しいものです。