歴史物語

赤ずきんの物語はいつもハッピーエンドだったのか?——中世ヨーロッパにルーツを持つ「悲劇」の原形

赤ずきんの物語はいつもハッピーエンドだったのか?——中世ヨーロッパにルーツを持つ「悲劇」の原形

「赤ずきん」の物語といえば、狼からおばあさんと赤ずきんが無事救い出されるハッピーエンドを思い浮かべる人がほとんどでしょう。しかし、アメリカの歴史学者ロバート・ダーントン(Robert Darnton)の研究によれば、この物語の原型はヨーロッパ中世に農民たちによって生み出されたものであり、その結末は決して幸福なものではありませんでした。

現代版「赤ずきん」のあらすじ

現在広く知られている物語(地域によっていくつかの異なる版本が存在します)では、赤ずきんの母親は、病気のおばあさんのために菓子やクッキー、ロールパンなどを用意し、娘に届け物を頼みます。母親は「知らない人と話をしないこと」「行き先を口外しないこと」「何があっても立ち止まらないこと」という一連の注意を与えて送り出します。

少女はおばあさんの家へ向かうために、森を抜けていかなくてはなりません。道中で彼女は「森の天使」を名乗る狼に出会います。狼は行き先を尋ね、赤ずきんは素直におばあさんの家の場所を教えてしまうのです。

家に着いた赤ずきんはおばあさんを呼びますが、返事はありません。部屋に入ると、おばあさんは具合が悪くて起き上がれないのだと思い込みます。この版本では、狼はおばあさんに変装して少女を騙そうとします。物語の最後には猟師が駆けつけて狼を退治し、赤ずきんとおばあさんは無事助け出され、物語はハッピーエンドで幕を閉じます。

ハッピーエンドは18世紀末以降の産物

実は、上記のような温かい結末はロマン主義的な版本であり、18世紀末にヨーロッパで始まった文学におけるロマン主義とともに登場したものでした。

アメリカの歴史学者ロバート・ダーントンは、著書『猫の大虐殺――フランス文化史のエピソード』の中で、「赤ずきん」の起源はヨーロッパ中世にあると指摘しています。当時、農民たちは畑仕事に出なければならず、幼い子どもたちを家に一人残していくしかありませんでした。

中世の原本は「悲劇」だった

ダーントンによれば、中世に生まれた「赤ずきん」の筋書きは、おばあさんと子どもの両方が命を落とす悲劇的な結末へと展開しました。狼はまずおばあさんの命を奪い、その肉と血で宴を開きます。赤ずきんはそれと知らずに腹いっぱい食べ、その直後、今度は自分自身が狼の餌食となったのです。

怖い話が果たしていた教育的な役割

ダーントンの解釈によれば、親元を離れて子どもだけが家に残される状況にあった農民たちは、親の不在時に危険な森や林へ子どもが出かけていかないよう、恐ろしい結末を持つ物語を意図的に語り継いだのだといいます。

歴史の進展とともに、「赤ずきん」の物語は時代ごとの道徳観・倫理観・文化的価値観に応じて変化と変容を重ねてきました。私たちが今日知っているハッピーエンドは、長い歴史の中で比較的最近になって定着したものなのです。