
古代ヨーロッパに暮らしたケルト人。彼らの食生活を支えていた中心的存在こそが、「ラグー」と呼ばれる料理でした。
力強い味わいが特徴のケルト料理
ローマ人から「ガリア人」と呼ばれた、現在のフランス地方の住民たち、すなわちケルト人の料理は、力強く濃厚な風味と、古代民族の食文化としては珍しい比較的多彩な食材の組み合わせが大きな特徴でした。
ラグーは「ソース」ではなく完全食だった
ケルト料理の基本であり、あらゆる地域に共通して広まっていたのがラグーです。ただし、当時のラグーは今日私たちがイメージするような、料理にかける調味用のソースではありません。カロリーも満腹感も十分な、いわば一品で完結する「単品料理」として食べられていたのです。
大鍋で煮込む豚肉スープの正体
ラグーは、ケルト人が日常のほぼすべての食材の調理に使っていた典型的な大鍋(かまど付きの釜)で作られました。その中身とは、彼らの食生活の基盤であった豚肉を主体とした濃厚なスープに、野菜と穀物を加えてじっくり煮込んだものです。肉・野菜・穀物が一つの鍋に揃うことから、栄養バランスにも優れた実用的な料理だったといえます。
ローマを魅了した「プルメントゥム」
カエサルによるガリア征服の後、二つの文化の食習慣は互いに影響を及ぼし合うようになりました。その交流の中で、ラグーはローマ人をも虜にします。こうしてケルト発祥のこの料理は、プルメントゥム(plumentum)という名前でローマ世界へと広まり、古代地中海世界の食卓に新たな一ページを刻むこととなったのです。