クレイトン独占禁止法(Clayton Antitrust Act)は、1914年に制定されたアメリカ合衆国の連邦反トラスト法です。1890年のシャーマン独占禁止法だけでは独占の拡大を十分に抑えられなかったことを受け、その補完として成立しました。競争を実質的に減少させるおそれのある特定のビジネス慣行――価格差別、排他的取引契約、抱き合わせ販売、そして合併などを規制の対象としています。
クレイトン法が禁止する主な行為
1. 価格差別
同一の商品やサービスについて、顧客ごとに異なる価格を設定し、その結果として競争を実質的に減らしたり独占を生み出したりする行為です。大企業が一部の市場で意図的に価格を操作し、競合を駆逐するようなケースが典型例とされます。
2. 排他的取引契約
顧客に対し、供給品のすべてまたは大部分を単一のサプライヤーからのみ購入することを義務づける契約です。これによって他社が市場に参入しづらくなり、競争が損なわれる場合に違法となります。
3. 抱き合わせ契約(タイイング)
ある商品やサービスを購入する条件として、別の商品やサービスの購入を強制する行為です。市場での優位性をてこにして他分野の競争を歪めるおそれがあるため、規制の対象となります。
4. 合併・買収(M&A)
他社との合併や買収により、競争を実質的に減少させたり独占を形成したりすることが懸念される場合も禁止されます。この規定は、後にハート・スコット・ロディノ法(1976年)による大規模M&Aの事前届出制度へと発展しました。
政府に与えられた執行権限
クレイトン法は、政府が差し止め命令(インジャンクション)を求めて反競争的な行為を停止させたり、法律に違反して取得された資産の処分(ディベスチャー)を企業に命じたりする権限を保障しています。また、私的当事者が損害賠償を求める訴訟を提起できる道も開いた点が特徴です。
適用されてきた主な事例
クレイトン法は、さまざまな業界の企業行動に対して適用されてきました。1920年代のAT&Tの排他的取引契約、1990年代のマイクロソフトの抱き合わせ販売をめぐる問題、そして2010年代以降の大手IT企業の反競争的行為への対応など、時代とともにその役割を広げています。
なお、クレイトン法制定以前の1911年には、シャーマン法に基づきスタンダード・オイルが解体されており、こうした反トラスト政策の歴史的流れの中で本法が誕生した経緯があります。
クレイトン法の意義
クレイトン法は、アメリカ経済における健全な競争を維持するための重要な法的手段です。独占の形成や反競争的な慣行を未然に防ぐことで、消費者や中小企業を不当な扱いから守り、公正で活力ある市場の実現に貢献しています。