結論から言えば、ジョン・ハーシーは著書『ヒロシマ』の中で、この点について一切説明していません。
ハーシーは「皮肉な事実」について語っていない
『ヒロシマ』(原題:Hiroshima)は、1945年8月6日に広島へ投下された原子爆弾を生き延びた市民たちの証言を通じて、被爆当日の様子を描いたルポルタージュです。
ところで、しばしば「原爆が落ちる直前に空襲警報解除のサイレンが鳴り響いていたのはなんとも皮肉だ」という趣旨の話を目にすることがあります。しかしこの点について、ジョン・ハーシーは作中でいかなる説明もしていません。
その理由――投下直前に解除信号は鳴っていなかった
最大の理由はシンプルです。原爆が投下される直前に、警報解除のサイレンは実際には鳴っていなかったからです。そもそも存在しなかった出来事について、説明しようがないのです。
『ヒロシマ』が描いたのは「予告なき破壊」
ハーシーが丁寧に描いているのは、むしろ8月6日の朝の平穏な日常のひとコマです。当時の広島は大規模な空襲を免れており、市民たちは度重なる警戒警報と誤報に慣れきっており、その日もいつも通り出勤や家事に取り掛かろうとしていました。
つまり本書の核心にあるのは「解除のサイレンが鳴った直後に爆弾が落ちた」という皮肉ではなく、ほとんど何の警告もないまま、一瞬にして日常ごと破壊された街の姿なのです。
まとめ
ジョン・ハーシーは『ヒロシマ』の中で「投下直前に鳴った警報解除の信号」について説明していません。それは、そのような信号が実際には鳴らなかったためです。本書が伝えているのは、無警告のうちに訪れた惨劇と、そこから生き延びた人々の生の体験なのです。