歴史物語

「我らの本質のより善き天使」とは誰の言葉?リンカーン就任演説の名文句

「我らの本質のより善き天使」——この言葉を残したのは誰か

「Better angels of our nature(我らの本質のより善き天使)」という有名な一節は、エイブラハム・リンカーンによって広められました。彼がこの言葉を用いたのは、1861年3月4日に行われた最初の就任演説においてです。

南北分裂の危機に放たれた訴え

当時のアメリカは、奴隷制をめぐる対立を背景に、南北分裂の瀬戸際にありました。リンカーンはこの演説の中で、北部と南部の双方に対し、内戦という最悪の結末を避け、奴隷制問題を平和的に解決するよう呼びかけました。

「より善き天使」という表現は、怒りや憎しみといった破壊的な衝動ではなく、理性・寛容・同胞愛といった人間の高貴な本能に耳を傾けるべきだというメッセージでした。まさに国家の存亡が懸かった瞬間に発せられた、良心への訴えだったのです。

言葉が遺したもの

残念ながらリンカーンの呼びかけは内戦の勃発を防ぐには至りませんでしたが、この一節は「人間の善意と礼節が破壊的な傾向に打ち勝つこと」を願う普遍的なメッセージとして、後世に広く知られるようになりました。

現代では、心理学者スティーブン・ピンカーが2011年の著書『The Better Angels of Our Nature(人間の本性を考える)』のタイトルにこの言葉を採用したことで、改めて世界的な注目を集めました。暴力の歴史を分析した同書は、人類が少しずつ暴力を抑制する方向へ進んできたことを論じ、「より善き天使」という比喩に新たな命を吹き込んでいます。

まとめ

「我らの本質のより善き天使」は、エイブラハム・リンカーンが1861年の第一次就任演説で語った言葉です。国家の分断の危機の中で発せられたこの訴えは、160年以上経った今もなお、人間の良心と理性への信頼を象徴する名言として受け継がれています。