結論から言うと、オデュッセウスはキュクロプス(ポリュペモス)を殺していません。ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』第9歌によれば、オデュッセウスとその部下たちは、一つ目の巨人ポリュペモスを殺すのではなく、眠っている間に目をつぶし、その隙に脱出するという手段を選びました。
なぜ殺さなかったのか?
ポリュペモスの住む洞窟の入り口は、人間には動かせないほど巨大な岩で塞がれていました。もしオデュッセウスたちが巨人を殺してしまえば、誰も岩をどかせず、洞窟の中に閉じ込められたまま全滅してしまうのです。そこで彼らは「殺さずに生かし、逃げ道を確保する」という綱渡りの作戦を選択しました。
目潰しと脱出の巧妙な戦略
オデュッセウスはまず、「私の名前は『誰でもない(ウーティス)』だ」と名乗り、ポリュペモスを欺きます。そして熱した先の尖ったオリーブの杭で、眠る巨人の唯一の目を突き刺しました。悲鳴を上げて駆けつけた他のキュクロプスたちに対し、ポリュペモスは「『誰でもない』がやった」と答えるしかなく、救援を断念せざるを得ません。
さらに翌朝、盲目となった巨人が羊の群れを放牧に出す際、オデュッセウスたちは羊の腹の下にしがみつくことで、巨人の手触りの検問を潜り抜け、見事に洞窟から脱出しました。
まとめ
このエピソードは、単なる武力ではなく知恵と狡猾さで勝利を掴むオデュッセウスの本領を示す場面として有名です。「殺さずに退ける」という選択こそが、生還への唯一の道だったのです。