『すばらしい新世界』の結末とは
オルダス・ハクスリーの代表作『すばらしい新世界』(Brave New World、1932年)は、科学技術によって完全に管理された未来社会を描いたディストピア小説です。物語の終盤、「野蛮人」として外界から連れてこられたジョンは、この「幸福な」社会に深い絶望を抱くことになります。では、小説の最後には一体何が起こるのでしょうか。
ソーマ暴動と逮捕
母リンダが死んだ直後、ジョンは死をも無機質に管理する世界国家の冷たさに耐えられなくなります。彼は死ぬ間際の患者たちが収容される病院で、「幸福の薬」ソーマを窓から投げ捨て、集まった労働者たちに自由を訴えました。しかしこの行為は暴動を引き起こすだけで、ジョン、バーナード、ヘルムホルツの3人はワールド・コントローラーの一人、ムスタファ・モンドのもとへ連行されてしまいます。
モンドとの対話――幸福か、自由か
その後に行われるジョンとモンドの対話は、本作の思想的な核心とも言える場面です。モンドは、社会の安定と幸福のためには芸術・宗教・真実の自由が犠牲になっても仕方がないと主張します。一方のジョンは、「不幸になる権利」さえも含めて自由を選ぶべきだと訴え続けます。結局、バーナードはアイスランドへ、ヘルムホルツは風光明媚な島への追放という処分を受けます。ジョンだけは「汚れきった文明から離れたい」という希望により、処分を保留されます。
灯台での隠遁と悲劇的な最期
ジョンはロンドン郊外の廃灯台に身を潜め、自らの罪を清めようとします。しかし、彼の自罰的な行為はやがて報道陣の目にとまり、好奇心に駆られた見物客が次々と押し寄せるようになります。ついにジョンは、群衆とともにソーマの乱痴気騒ぎへと巻き込まれてしまうのです。翌朝、自らの弱さに深く絶望したジョンは、灯台の中で首をつり、自ら命を絶ちます。
結末が示す警告
『すばらしい新世界』の結末は、全体主義と社会的同調の危険性についての強烈な警告となっています。ハクスリーは、安定と秩序を何よりも優先する社会が、いかに容易に専制へと滑り落ちるかを描き出しました。また、自由と個性を大切にする個人であっても、巨大なシステムの前では脆くも打ち砕かれてしまうことを、ジョンの悲劇は象徴しています。「幸福」という名の管理社会に対する抵抗は、この物語において決して成功しないのです。