歴史物語

グッディ・パットナムはなぜセイラムに魔女がいると信じたのか?――その質問の前提を検証

「グッディ・パットナム(Goody Putnam)は、なぜセイラムに魔女がいると信じたのか?」――この質問について最初に指摘しておきたいのは、「グッディ・パットナム」という名前の人物が、マサチューセッツ州セイラムに実在したことを示す歴史的記録は存在しないという点です。つまり、この問い自体に史実としての根拠はないのです。

史実としての裏付けはない

1692年に始まるセイラム魔女裁判については、当時の法廷記録や文書が数多く残されています。しかし、その中に「グッディ・パットナム」という名で記録された人物は確認できません。そもそも「グッディ(Goody)」とは、当時の一般女性への敬称「グッドワイフ(Goodwife)」の略であり、固有の名前ではありません。したがって、この人物の信念や動機を史実として語ることはできないのです。

名前の由来は戯曲『るつぼ』か

もっとも、この名前を耳にする方の多くは、アーサー・ミラーの戯曲『るつぼ(The Crucible)』を通じて知った可能性が高いでしょう。同作には「グッディ・パットナム(アン・パットナム)」という登場人物が現れ、幼い子どもたちを次々と亡くした悲しみや隣人への恨みから、娘の異常な症状を「魔術の仕業」と信じ込む姿が描かれています。

つまり「パットナム夫人が魔女を信じた理由」は、あくまでフィクションとしての劇中設定なのであり、実在の人物の発言や思想として扱うべきものではありません。セイラム魔女裁判そのものは実際に起きた悲劇的な事件ですが、個々の人物像や動機については、創作と史実を丁寧に区別して理解することが重要です。