「涙の谷(Valley of Tears)」は、2020年9月から10月にかけて、係争地域であるナゴルノ・カラバフでアルメニア軍とアゼルバイジャン軍が衝突した一連の戦闘に付けられた名称です。この戦いは、第二次ナゴルノ・カラバフ戦争の中でも特に激しい攻防として知られています。
「涙の谷」の戦いが起きた時期
「涙の谷」の戦闘は、2020年9月27日に始まった第二次ナゴルノ・カラバフ戦争の序盤、9月末から10月にかけて発生しました。アゼルバイジャン軍が大規模な攻勢を開始した直後の時期であり、両国間の緊張が一気に高まった局面でした。
なぜ「涙の谷」と呼ばれるのか
この名称は、戦場となった山岳地帯の斜面が戦略上の要所であり、多くの犠牲者が出たことから付けられたと言われています。急峻な地形を利用してアルメニア側が防衛線を構築し、アゼルバイジャン側はドローンや砲撃を駆使して繰り返し攻撃を仕掛けました。数週間にわたる攻防の結果、両軍に大きな人的損害が生じ、この谷は悲劇の象徴として記憶されることになりました。
紛争の背景
ナゴルノ・カラバフは、ソ連崩壊前後からアルメニア系住民が多数を占める一方、国際的にはアゼルバイジャン領と認められている地域です。1994年の停戦以降、事実上アルメニア側の勢力圏となっていましたが、その帰属をめぐって両国の対立は長年続いてきました。2020年の戦争は、この数十年に及ぶ領土問題が再燃したものです。
その後の展開
2020年11月9日、ロシアの仲介により停戦合意が成立しました。この合意により、アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ周辺の広範な地域を実効支配下に置き、アルメニア側は撤退を余儀なくされました。「涙の谷」の戦いは、この紛争における転換点の一つと位置づけられており、南コーカサス地域の安全保障環境を大きく変える出来事となりました。