中世ヨーロッパにおいて、フレッチャー(fletcher)は矢を作ることを生業とした熟練の職人でした。「フレッチャー」という言葉は、フランス語で「矢」を意味する「フレーシュ(flèche)」に由来しています。彼らは木材、羽根、金属といったさまざまな材料と専用の道具を駆使し、一本の矢を丁寧に仕上げていました。
矢作りの工程
フレッチャーの作業は、まず真っ直ぐな木の棒を選ぶことから始まります。これが矢の軸(シャフト)となります。続いて、引き回し鉋(ドローナイフ)やスポークシェーブなどの道具を使い、木を削りながら丁寧に形を整えていきました。
軸が完成すると、先端には金属製の鏃(やじり)を取り付けます。その後、矢がまっすぐ飛ぶように羽根を軸に接着し、最後に弦にかけるための切れ込み(ノック)を矢の後端に加えて、ようやく一本の矢が完成します。
中世社会における重要な役割
フレッチャーは中世社会に欠かせない存在でした。彼らが作った矢は、狩猟、戦争、スポーツなど幅広い場面で使われていたからです。中世において、矢は軍隊が用いる主要な飛び道具であり、狩人たちも獲物を仕留めるために大量の矢を必要としていました。
高度な技術を持つフレッチャーの仕事は、中世の軍隊や狩人の成功を左右するほど重要なものでした。そのため需要は常に高く、職人としての評価も非常に高いものでした。
矢以外の仕事
フレッチャーの仕事は矢作りだけにとどまりません。矢筒、弓弦、ブレイサー(腕当て)といった他の射箭用具の製作も手がけていました。さらに、既存の用具の修理やメンテナンスも担当しており、弓術に関わるあらゆる分野を支える専門職だったのです。