アジアの歴史

チプコ運動のリーダーは誰?スンダルラル・バフグナと森林保護運動の全貌

「チプコ運動のリーダーは誰?」という疑問に対する答えは、インドを代表する環境活動家であるスンダルラル・バフグナ(Sunderlal Bahuguna)氏です。本記事では、彼の人物像とともに、1970年代にインドで巻き起こったこの歴史的な森林保護運動の背景や意義について詳しく解説します。

チプコ運動のリーダー:スンダルラル・バフグナ

スンダルラル・バフグナ(1927年~2021年)は、ウッタラーカンド州(当時はウッタル・プラデーシュ州の一部)出身の環境活動家・哲学者です。彼はガンジーの思想に深く影響を受け、非暴力の精神に基づく環境保護運動を展開しました。

バフグナ氏は「木こりに斧を振るわせる前に、まず私たちの体を切れ」という有名な言葉を残し、何千人もの村人たちに木を抱いて伐採から守るよう呼びかけました。また、約5,000キロメートルに及ぶ長距離行進を行い、ヒマラヤの森林破壊の実態を全国に訴えたことでも知られています。その献身的な活動により、1986年にはインド政府からパドマ・シュリー勲章を受章しましたが、後にこれを返上した逸話も残っています。

チプコ運動とはどのような運動だったのか

チプコ運動は1973年に現在のウッタラーカンド州で始まった、非暴力的な森林保護運動です。「チプコ(Chipko)」とは現地の言葉で「抱きつく」を意味し、村人たちが商業目的での伐採から樹木を守るために自らの体を木に抱きつけて守ったことが名称の由来です。

この運動は、地元住民の生活基盤である森林が企業によって大量に伐採され、洪水や土砂崩れなどの自然災害が頻発していたことを受けて発生しました。特に女性たちは薪や水汲みなど日常的に森林に依存していたため、運動の中核的な存在となりました。

バフグナ以外の重要な指導者たち

チプコ運動は一人のリーダーだけで成し遂げられたものではなく、複数の指導者たちの協力によって広がりました。

  • ガウラ・デヴィ(Gaura Devi):レニ村の女性たちを率い、「木を抱いて守る」という戦術を実践した女性リーダー。
  • チャンディ・プラサード・バット(Chandi Prasad Bhatt):ダシュオリ・グラミヤ・スワラジ・サング組織を設立し、運動の組織化に貢献した活動家。
  • ビンチュリ・デヴィ(Bachni Devi):地域の女性たちをまとめ上げ、伐採に立ち向かった先駆的存在。

運動がもたらした成果と影響

チプコ運動の活躍は大きな成果につながりました。1980年にはインド政府がウッタラーカンド地方のヒマラヤ林域における緑の木々の15年間の伐採禁止令を発布し、運動は世界的な環境保護運動のモデルとして注目されるようになりました。

この運動はインド国内にとどまらず、世界中の環境保護活動に多大な影響を与え、持続可能な森林管理や地域住民参加型の自然保護の重要性を世界に示す先駆けとなりました。スンダルラル・バフグナ氏の「自然と共生する」という理念は、今日の気候変動対策やSDGsの考え方にも通じるものとして、今なお多くの人々に受け継がれています。