「日本の塔と中国の塔は構造がまったく違う」というのは、実は誤解を含んだ見方です。両者には多くの共通点があります。そもそも日本の仏塔は、中国から伝来した建築様式をベースに発展してきたものだからです。ただし、その一方で重要な相違点も確かに存在します。
日本の塔と中国の塔にみられる共通点
まず押さえておきたいのは、日中の塔には基本的な構造上の類似点が数多くあるという点です。
- 木造建築が中心:古い時代の塔は、いずれも木材を主要な建材としています。
- 多層構造:三重塔や五重塔のように、複数の層(重)を積み上げた形式を採用しています。
- 相輪(そうりん):塔の最上部には、仏教における象徴として相輪と呼ばれる金属製の尖塔が据えられています。
日本の塔と中国の塔の主な違い
一方で、両者の間にはいくつかの重要な相違点も存在します。主な違いは以下の通りです。
1. 屋根の形式
日本の五重塔などに見られる屋根は、各層に深い軒(のき)を設け、反りのある優美な曲線を持つのが特徴です。これに対し中国の塔では、層ごとの軒の出が浅く、より直線的で装飾性の高いデザインが好まれる傾向があります。
2. 組物(組みもの)のシステム
柱と梁をつなぐ「組物」と呼ばれる斗栱(ときょう)の構法にも違いがあります。日本では大斗や巻斗などを組み合わせた独自の発展を遂げましたが、中国では時代ごとに多様な形式が生まれてきました。
3. 层数の違い
中国の塔は七重・九重など奇数の多層塔が多く、高さ数十メートルに及ぶものもあります。一方、日本で主流となったのは三重塔と五重塔であり、比較的低層で安定感のあるプロポーションが特徴です。
4. 建材の違い
さらに補足すると、中国では唐代以降、レンガや石造りの塔が広く普及しました。木造建築が火災に弱かったことが一因とされます。日本では木造の伝統が強く受け継がれ、法隆寺五重塔(世界最古級の木造建築)に代表されるように、木造技術が高度に洗練されていきました。
日本の塔ならではの耐震構造
日本の塔が世界的に注目される理由の一つが、その優れた耐震性です。五重塔の中心には「心柱(しんばしら)」と呼ばれる太い柱が貫いており、地震の揺れを吸収・分散するクッションのような役割を果たします。この柔構造のおかげで、歴史上の大地震でも倒壊した五重塔は極めて少ないとされています。
まとめ
日本の塔と中国の塔は、木造・多層・相輪といった共通の基本構造を持ちながら、屋根の形状、組物の構法、层数、建材などの面で異なる進化を遂げてきました。日本の塔は中国から伝来した様式を土台にしながら、地震の多い風土に適応した独自の技術を発展させた結果だと言えるでしょう。