国連による対イラク経済制裁の背景
1990年8月、イラクによるクウェート侵攻を受け、国連安全保障理事会は数度にわたる制裁措置を発動しました。この制裁の主な目的は、イラクに対してクウェートからの撤退と、他の国連決議への遵守を迫ることにありました。具体的には、大量破壊兵器(WMD)計画の廃棄や、クウェート人捕虜の帰還などが求められました。
決議661:史上最も包括的な禁輸措置
1990年8月に採択された国連安保理決議661により、最も包括的な制裁が実施されました。この決議では、食料品と医薬品を除くすべての対イラク輸出入が禁止されました。
さらに、海外にあるイラク資産の凍結、外国企業によるイラクとの取引禁止、そしてイラクの石油販売能力の制限も盛り込まれました。
制裁がもたらした影響
この制裁はイラク経済に壊滅的な打撃を与えました。広範な貧困と栄養失調が発生し、複数の感染症の流行にもつながりました。また、密輸をはじめとする犯罪活動の増加という副作用も生じました。
石油食料交換プログラムの導入
1996年、国連安保理は決議986を採択し、イラクが限定的に石油を販売し、その収益で食料やその他の人道的物資を購入することを認めました。いわゆる「石油食料交換プログラム」です。しかし、制裁自体は2003年の米国主導によるイラク侵攻まで継続されました。
国連が禁輸措置を実施した具体的な理由
- クウェート侵攻への懲罰:この侵攻は国際法の明白な違反であり、こうした侵略行為が国際社会によって容認されないことを明確に示す必要がありました。
- 石油収入による軍事費調達の阻止:国際市場での石油販売を遮断することで、イラクの主要な収入源を断ち切り、軍事力の維持・拡大を困難にすることが狙いでした。
- 他の国連決議遵守への圧力:クウェートからの撤退、隣国の領土保全の尊重、大量破壊兵器計画の廃棄などを強制する意図がありました。
禁輸措置をめぐる論争と負の側面
対イラク禁輸措置は国際的に大きな議論を呼んだ措置であり、数多くの否定的な結果をもたらしました。
- 食料・医薬品不足:禁輸により食料と医薬品が深刻に不足し、広範な栄養失調と疾病を引き起こしました。
- 経済的打撃:イラク経済は甚大な被害を受け、高い失業率と貧困が蔓延しました。
- 人道的危機:何百万人もの市民が貧困の中で生活し、基本的なサービスへのアクセスを失う深刻な人道的危機が発生しました。
- 環境被害:大気汚染や水質汚染をはじめとする重大な環境破壊ももたらしました。
制裁の成果と解除
これらの否定的な結果にもかかわらず、禁輸措置は主要な目的を達成したと評価されています。イラクはクウェートからの撤退を余儀なくされ、最終的には大量破壊兵器計画の廃棄に同意しました。
禁輸措置は、2003年の米国主導によるイラク侵攻後にようやく解除されることとなりました。