北部の労働者は奴隷制度の廃止に反対していたのか?
実は、アメリカ北部の労働者の大多数は、奴隷制度の廃止に反対していませんでした。むしろ、多くの北部労働者が廃止運動(アボリショニズム)に積極的に関わっていました。彼らにとって奴隷制度は、遠い南部の問題ではなく、自分たちの生活に直結する切実なテーマだったのです。
雇用競争と賃金低下への恐れ
北部の労働者が奴隷制度、特にその「拡大」に強い危機感を抱いた最大の理由は、雇用と賃金への影響です。当時、奴隷として働かされる人々は、自由な労働者よりもはるかに低いコストで使役できると考えられていました。そのため、奴隷制が新たな領土へ拡大すれば、安価な奴隷労働が自由労働者の仕事を奪い、賃金を押し下げるのではないかという不安が広がっていたのです。
強力な奴隷所有階級の台頭への警戒
さらに、もう一つの重要な懸念がありました。それは、奴隷制度の拡大によって、政治的権力と影響力を握る強力な奴隷所有階級が生まれるのではないかという点です。もし奴隷主層が国家の政策を支配するようになれば、北部の労働者や一般市民の利益が犠牲にされる恐れがあると考えられていました。
経済的動機と道徳的信念の融合
このように、北部労働者の廃止論への支持は、人道主義的な信念だけでなく、自らの職と賃金、そして政治的な立場を守ろうとする現実的な動機にも支えられていました。奴隷制度の存続と拡大がもたらす経済的脅威への警戒こそが、多くの北部労働者を廃止運動へと駆り立てた大きな要因だったのです。