北米の歴史

大西洋奴隷貿易で知られる人物とは?商人から廃止運動家まで

はじめに

大西洋奴隷貿易(三角貿易)は、16世紀から19世紀にかけて数百万人のアフリカ人を強制的にアメリカ大陸へ移送した、歴史上最も大規模な強制移住の一つです。この貿易には商人や船長、植民地の関係者が深く関わる一方で、自ら奴隷として売られた経験を持つ人物が後に廃止運動の中心となるなど、多様な人々の歴史が刻まれています。ここでは、大西洋奴隷貿易に関わった、あるいはその廃止に尽力した代表的な人物を紹介します。

ジョン・ホーキンス(1532年〜1595年)

イングランドの海軍軍人・奴隷貿易商で、大西洋奴隷貿易の「先駆者」とされる人物です。1560年代、エリザベス1世の後援を受けてアフリカ西岸へ航海し、捕らえたアフリカ人をアメリカ大陸へ運び、プランテーションの労働力として売却する交易路の原型を築きました。彼の航海は莫大な利益をもたらし、イングランド本格的な奴隷貿易への参入の道を開くことになりました。

エドワード・コルストン(1636年〜1721年)

イングランド・ブリストルゆかりの商人で、イギリスの対アフリカ奴隷貿易を独占していた王立アフリカ会社の副総裁を務めた人物です。奴隷貿易によって得た巨額の富を故郷ブリストルに投じ、学校、病院、教会などの慈善事業を数多く設立したことから、長らく「慈善家」として顕彰されてきました。しかし2020年には奴隷貿易への関与が改めて厳しく問われ、市内にあった彼の銅像が抗議行動の中で引き倒されて海に投げ込まれる出来事が起こり、歴史的評価の見直しが一気に進みました。

オラウダー・エクイアーノ(1745年頃〜1797年)

現在のナイジェリアにあたる地域に生まれ、幼少期に誘拐されて奴隷として売られた元奴隷の作家・廃止論者です。アメリカ大陸へ移送された後、自由を買い戻すことに成功しました。1789年に出版された自伝『アフリカ人エクイアーノの生涯に関する興味深い物語』はベストセラーとなり、奴隷貿易の悲惨な実態を広く世間に知らしめ、イギリスの奴隷貿易廃止運動に決定的な影響を与えました。

ベンジャミン・フランクリン(1706年〜1790年)

アメリカ合衆国建国の父の一人であり、科学者・発明家・政治家として広く知られる人物です。若い時期には奴隷を所有していたこともありましたが、晩年には奴隷制に対する見解を大きく転換させ、ペンシルベニア奴隷制廃止協会の会長を務めるまでになりました。フランクリンの思想の変遷は、当時のアメリカ社会における奴隷制をめぐる議論の複雑さを象徴しています。

ウィリアム・ウィルバーフォース(1759年〜1833年)

イギリスの政治家で、奴隷貿易廃止運動の中心人物です。トマス・クラークソンらとともに国民的な廃止キャンペーンを展開し、1807年の奴隷貿易禁止法の成立に決定的な役割を果たしました。さらにその死の直前となる1833年には、イギリス帝国内の奴隷制そのものを廃止する法律が可決され、彼の長年の闘いが実を結ぶことになりました。

まとめ

大西洋奴隷貿易をめぐる歴史には、貿易で富を築いた商人、その実態を世界に伝えた元奴隷の作家、そして廃止を実現させた政治家まで、さまざまな立場の人物が登場します。彼らの人生をたどることは、奴隷貿易という歴史の悲劇と、それに立ち向かった人々の闘いを理解するうえで重要な手がかりとなります。