19世紀後半のアメリカ合衆国では、鉄鋼・石油・鉄道などを中心に独占(モノポリー)やトラストが急速に形成されました。独占の発展は経済にプラスとマイナス両方の影響をもたらしました。一定の肯定的な効果は認められるものの、全体としてはさまざまな負の側面が顕在化していきました。
独占がもたらした肯定的な効果
1. 効率性の向上
独占企業は競争を排除することで、資源を一元化し、生産工程を標準化し、規模の経済を実現できました。その結果、効率が向上し、生産コストの低下が期待できました。
2. 技術革新の促進
市場での支配力を強化するため、独占企業は研究開発に多額の投資を行うことが多く、業界全体に利益をもたらす技術革新や進歩につながりました。
3. 資本蓄積の拡大
巨額の利益と市場支配力を握った独占企業は、膨大な資本を蓄積することが可能でした。この資本は、さらなる投資や経済拡大に活用される潜在力を持っていました。
4. 一時的な価格低下
場合によっては、独占企業が競合他社を駆逐したり市場シェアを獲得したりする目的で、略奪的価格設定を行うことがありました。これにより、消費者は一時的に低価格の恩恵を受けることがありました。
5. 品質・標準の管理
独占企業は統一された品質基準や仕様を徹底できる立場にあったため、製品品質の一貫性を確保できる可能性がありました。
独占がもたらした否定的な影響
しかしながら、独占のマイナスの影響は、こうしたメリットをしばしば上回っていた点を見逃せません。
1. 競争と選択肢の減少
独占は定義上、競争を排除するため、消費者の選択肢が失われ、市場におけるイノベーションが阻害されました。
2. 価格の高騰
独占企業は市場支配力を行使して、競争水準を超える価格を設定でき、結果として消費者の負担が増大しました。
3. イノベーションの停滞
競争圧力がなければ、独占企業には製品やサービスの改善・革新に取り組むインセンティブが低下しました。
4. 所得格差の拡大
富と権力が少数者の手に集中することで、社会全体の所得格差が拡大する一因となりました。
5. 権力の乱用
支配的な地位を利用し、反競争的な行為や不当な労働慣行など、権力の乱用に手を染めるケースも見られました。
独占禁止法の制定へ
独占による悪影響への対応として、アメリカでは公正な競争を促進し、消費者を保護するための独占禁止法(アンチトラスト法)が制定されました。1890年のシャーマン反トラスト法に代表されるこの政策転換は、独占がもたらしうる効率性といったメリットと、経済的公正や消費者福祉を守る必要性との間でバランスを取ろうとする試みでした。