北米の歴史

20世紀の中東で起きた戦争とは?主要な戦争・紛争を時代別に解説

はじめに

20世紀の中東は、オスマン帝国の崩壊、欧州列強による植民地支配、冷戦構造、そして石油資源をめぐる国際的な利害が複雑に絡み合い、世界で最も多くの戦争と紛争が発生した地域の一つでした。この記事では、20世紀の中東で起きた主要な戦争を時代順に整理し、それぞれの背景と概要をわかりやすく解説します。

オスマン帝国末期の戦争と改革運動(1870年代〜1913年)

20世紀初頭の中東は、衰退著しいオスマン帝国とカージャール朝ペルシアを中心に、列強の干渉と内部改革のせめぎ合いが続いていました。

  • 露土戦争(1877年〜1878年):ロシア帝国とオスマン帝国がバルカン半島の覇権をめぐって戦った戦争です。オスマン帝国の敗北により、ルーマニア、セルビア、モンテネグロ、ブルガリアの独立が国際的に承認されました。
  • ペルシア立憲革命(1905年〜1911年):専制政治と外国の経済的支配に反対するイラン(当時のペルシア)の革命運動で、立憲君主制と議会(マジュレス)の設立をもたらしました。
  • 伊土戦争(1911年〜1912年):イタリア王国がオスマン帝国から現在のリビアにあたるトリポリタニアなどを奪取した戦争です。
  • バルカン戦争(1912年〜1913年):バルカン諸国がオスマン帝国のヨーロッパ領を奪おうとした二度の戦争で、オスマン帝国のヨーロッパにおける支配はほぼ終焉を迎えました。

第一次世界大戦と中東の再編(1914年〜1923年)

第一次世界大戦は、中東の地図を根本から塗り替えた大きな転換点でした。

  • 第一次世界大戦(1914年〜1918年):オスマン帝国は中央同盟国側で参戦しましたが敗北し、帝国は解体されました。戦後、サイクス=ピコ協定などに基づき、中東は英仏の委任統治領として分割されました。
  • アラブ反乱(1916年〜1918年):オスマン帝国の支配からの独立を目指してアラブ人が起こした蜂起です。映画「アラビアのロレンス」のモデルとなったT.E.ロレンスの活躍でも知られています。
  • トルコ独立戦争(1919年〜1923年):連合国による占領と分割に抵抗し、ムスタファ・ケマル(後のアタテュルク)が率いた戦争です。1923年のローザンヌ条約締結とトルコ共和国の成立につながりました。
  • 希土戦争(1919年〜1922年):小アジア(アナトリア)への進出を図ったギリシャと、トルコ民族主義勢力との間で戦われた戦争で、トルコ側の勝利に終わりました。

パレスチナ問題と四つの中東戦争(1948年〜1973年)

1948年のイスラエル建国をきっかけに、アラブ諸国とイスラエルの対立は20世紀中東最大の火種となりました。

  • 第一次中東戦争(1948年〜1949年):イスラエルの独立宣言直後に、エジプト、ヨルダン、シリア、レバノン、イラクのアラブ連合軍が介入した戦争です。イスラエルでは「独立戦争」、パレスチナ人には「ナクバ(大災厄)」と呼ばれます。
  • 第二次中東戦争(1956年):通称「スエズ危機」。エジプトのナセル大統領によるスエズ運河国有化に対し、イギリス、フランス、イスラエルがエジプトに侵攻しましたが、米ソの圧力により撤退を余儀なくされました。
  • 第三次中東戦争(1967年):「六日間戦争」とも呼ばれます。イスラエルが先制攻撃でエジプト、ヨルダン、シリアを破り、シナイ半島、ガザ地区、ヨルダン川西岸、ゴラン高原を占領しました。
  • 第四次中東戦争(1973年):「ヨム・キプル戦争」。エジプトとシリアがユダヤ教の祝日に合わせて奇襲攻撃を行い、開戦当初はアラブ側が優位に立ちました。この戦争を機にOPECによる石油禁輸が実施され、世界的な石油危機が発生しました。

内戦と地域大国の衝突(1975年〜1980年代)

  • レバノン内戦(1975年〜1990年):キリスト教徒、スンニ派、シーア派など宗派間の対立を背景に、約15年にわたって続いた内戦です。シリアやイスラエルの介入もあり、甚大な犠牲者を出しました。
  • イラン・イラク戦争(1980年〜1988年):イラン革命後のホメイニ政権と、フセイン率いるイラクが国境紛争と湾岸の覇権をめぐって戦った長期戦争です。化学兵器の使用もあり、死傷者は数十万人に上るとされます。
  • アフガニスタン紛争(1978年〜):1979年のソ連軍侵攻に対し、米国の支援を受けたムジャーヒディーン(イスラム武装勢力)が抵抗し、ソ連は1989年に撤退しました。この紛争は、その後21世紀まで続く長期の混乱の発端となりました。

湾岸戦争と世紀末の転換点(1990年〜1991年)

湾岸戦争(1990年〜1991年):イラクがクウェートを侵攻・併合したことを受け、米国を中心とする多国籍軍が国連決議に基づいて反攻作戦を実施しました。「砂漠の嵐作戦」と呼ばれる大規模な空爆と地上戦により、クウェートは解放されました。この戦争は、冷戦終結後の新しい国際秩序を象徴する出来事ともされています。

21世紀へ持ち越された紛争

20世紀に端を発する一部の紛争は、21世紀に入っても継続または再燃しました。

  • イラク戦争(2003年〜2011年):米英を中心とする有志連合が、フセイン政権の打倒を目指してイラクに侵攻した戦争です。
  • シリア内戦(2011年〜):アラブの春に端を発する反政府デモが内戦へと発展し、複数の外国勢力が介入する複雑な紛争となっています。
  • イエメン内戦(2014年〜):フーシ派と政府側勢力の対立を軸に、周辺国の介入も含む内戦が続いています。

まとめ

20世紀の中東の戦争は、帝国の崩壊から始まり、民族国家の形成、宗教・民族対立、大国の介入、そして石油資源をめぐる利害が織りなすものでした。これらの紛争の歴史をたどることは、現代の中東情勢を理解するうえで不可欠です。