無敵艦隊の一翼を担った「ジローナ号」とは
1588年、スペインの「無敵艦隊(アルマダ)」はイングランドとの戦いで壊滅的な打撃を受け、帰還の途上で多くの船を失いました。その中でも特に悲劇的だったのが、ナポリ分艦隊に所属していたガレアス船(帆とオールを併用する大型軍船)「ジローナ号」です。
ジローナ号は、他の難破船から救い上げた乗員や兵士を多数収容しており、推定1,300人以上が乗り込んでいたとされます。さらに、金貨・銀貨をはじめとする貴重な積荷も大量に搭載していました。
嵐の夜、アイルランド北部の岩礁で遭難
1588年10月末、ジローナ号は激しい嵐に襲われ、現在の北アイルランド・アントリム州の海岸、ジャイアンツ・コーズウェー付近の岩礁(ラカダ・ポイント)に打ち付けられて粉々に砕け散りました。乗船していた約1,300人のうち、生き延びたのはわずか260人前後だったと伝えられています。
なお、無敵艦隊総司令官メディナ・シドニア公爵自身はこの難破で亡くなっておらず、無事にスペインへ帰還しています。ジローナ号で命を落とした著名人物としては、艦隊きっての勇将として名高いアロンソ・マルティネス・デ・レイバが挙げられます。
1967年の発見と水中考古学調査
ジローナ号の残骸は1967年に発見され、その後、ベルギーの先駆的な潜水考古学者ロベール・ステニュイらによって本格的な水中発掘調査が行われました。調査では、金貨や銀貨、宝石をあしらった装身具、武器、大砲、そして乗員の私物など、膨大な遺物が引き揚げられました。
中でもルビーで飾られた金のサラマンダー形ペンダントは特に有名で、デ・レイバの所有品ではないかと考えられています。これらの貴重な遺物の多くは、ベルファストのアルスター博物館で公開されています。
無敵艦隊研究におけるジローナ号の意義
ジローナ号は、無敵艦隊の難破船の中でも最重要級の水中遺跡の一つとされています。当時の航海技術、船内での暮らし、そして16世紀末ヨーロッパの社会や文化を知る手がかりが数多く得られる、まさに「海底の時空カプセル」なのです。沈没船とそこから出土した遺物は、無敵艦隊の歴史と、その船上で生きた人々の実像に迫る貴重な機会を現代の私たちに提供し続けています。