イギリス南部の港湾都市ポーツマスは、長きにわたりイギリス海軍の拠点として栄えてきた街です。市内にあるポーツマス歴史的造船所には、チューダー朝からヴィクトリア朝にかけての名艦が保存・展示されており、世界中から多くの観光客が訪れます。ここでは、ポーツマスを代表する有名な船を5隻ご紹介します。
メアリー・ローズ号(Mary Rose)
メアリー・ローズ号は、ヘンリー8世の旗艦として活躍したイングランドのカラック型帆船です。1510年代に就役し、1545年にソレント海峡でフランス艦隊と交戦中に沈没しました。
沈没から437年後の1982年、船体は海底から奇跡的に引き上げられました。現在はポーツマス歴史的造船所内の専用博物館で展示されており、イギリス史上最も重要な考古学的発見の一つとされています。当時の乗員の生活や所持品から、チューダー朝海軍の実像に触れることができる貴重な存在です。
HMS ヴィクトリー(HMS Victory)
HMS ヴィクトリーは、現存する世界最古の現役軍艦です。1765年に進水し、1805年のトラファルガーの海戦ではネルソン提督の旗艦として、フランス・スペイン連合艦隊の撃破に決定的な役割を果たしました。
現在はポーツマス歴史的造船所で記念艦として保存されており、イギリス国内でも屈指の人気観光スポットとなっています。見学では、ネルソン提督が倒れた甲板上の場所を目にすることもできます。
HMS ウォーリアー(HMS Warrior)
HMS ウォーリアーは、1860年に進水したイギリス海軍初の鉄製装甲艦(アイアンクラッド)です。帆走と蒸気機関を併用しており、進水当時は世界最強クラスの軍艦と謳われました。
長年にわたる修復作業を経て1987年からポーツマス歴史的造船所で一般公開されており、ヴィクトリア朝の造船技術を間近に体感できる貴重な記念艦です。
HMS テメレール(HMS Temeraire)
HMS テメレールは、ナポレオン戦争期に活躍した98門搭載の戦列艦です。1805年のトラファルガーの海戦では、ヴィクトリー号に次いで敵陣に切り込み、フランス艦ルドゥタブル号を降伏させるなどの武勲を挙げました。
1838年に除籍・解体されましたが、曳航されていくその姿は画家ターナーの名作『戦艦テメレール』(1839年)に描かれ、今なおイギリスで最も愛される絵画の一つとして親しまれています。
HMS エクセレント(HMS Excellent)
HMS エクセレントは、1787年に進水した74門搭載の戦列艦です。船底を銅板で覆う「銅張り」を早期に採用した艦の一つで、船虫やフジツボによる船体の損傷を防ぐことに成功しました。
木造の船体自体は現存していませんが、その名はポーツマスのホエール島にある海軍砲術訓練施設「HMS エクセレント」に受け継がれており、今日でもイギリス海軍の教育訓練の中核を担っています。
まとめ
ポーツマスには、ここで紹介した5隻以外にも、第一次世界大戦のモニター艦M33や潜水艦アライアンスなど、見どころが数多くあります。400年以上にわたるイギリス海軍の歴史を一度に体感できるポーツマス歴史的造船所は、海軍史ファンはもちろん、家族連れの観光にもぴったりのスポットです。