南アメリカの歴史

刑事責任年齢とは?ブラジルの制度と引き下げをめぐる賛否両論

刑事責任年齢(ポルトガル語:maioridade penal、英語:criminal majority)とは、市民が自ら犯した犯罪行為に対して完全に法的責任を負うようになる年齢を定めた制度です。

ブラジルをはじめとする西洋諸国の多くでは、この年齢は18歳とされています。

刑事責任年齢とは?

人が「大人」と認められる最低年齢の設定は、文化、時代背景、性別、宗教などによって大きく異なります。

西洋諸国の大半では成人年齢は18歳です。日本では長らく20歳とされてきましたが、2022年の民法改正により18歳に引き下げられました。また、一部の先住民族の社会では、13歳前後に成人への通過儀礼(イニシエーション)が行われることもあります。

女性については、多くの文化において初潮の訪れが成人の証とされ、生殖能力を備えた女性として扱われてきました。

このように「成人」という概念は多面的に理解する必要があります。例えばブラジルでは、刑事責任を問われる年齢は18歳ですが、選挙権は16歳から18歳の間は任意とされています。つまり、成人年齢への到達は、公共生活・社会生活・政治生活における新たな責任を必ずしも伴うものではないのです。

刑事責任年齢とは?ブラジルの制度と引き下げをめぐる賛否両論

引き下げ賛成派の主張

凶悪犯罪を起こした場合の刑事責任年齢の引き下げをめぐっては、激しい議論が交わされてきました。賛否それぞれに複数の論拠があります。

まず、引き下げを支持する側の主な主張を見てみましょう。

  • 分別(識別能力):16歳から18歳の青少年には、すでに善悪を判断する能力がある。したがって、凶悪犯罪を犯した場合には完全に責任を問われるべきだ。
  • 処分措置の不十分さ:児童・青少年法(ECA)に定められた措置では不十分であり、多くの少年がこの制度を悪用して犯罪に手を染めている。
  • 麻薬組織による少年の勧誘の抑制:麻薬組織は少年が刑務所に入らないことを知った上で勧誘している。責任年齢を引き下げれば、こうした勧誘を抑える効果が期待できる。

引き下げ反対派の主張

一方、引き下げに反対する人々は、ブラジルが抱える構造的問題に言及します。

  • 社会的格差:ブラジルの社会問題の影響を最も強く受けるのは黒人や貧困層の青少年であり、引き下げはこの集団への人種差別や周縁化をさらに深刻化させる。
  • 教育:青少年の犯罪は処罰ではなく、教育と保健への投資によって解決されるべきだ。
  • 刑務所制度:国内の刑務所は成人の更生・社会復帰すら十分に機能しておらず、若者を受け入れるには到底ふさわしい環境ではない。

ブラジルにおける現状

ブラジルでは、18歳未満の人による違法行為については、児童・青少年法(ECA:Estatuto da Criança e do Adolescente)が適用されます。この法律は、個人への処罰よりも教育を優先するものであることが特徴です。

しかしその一方で、刑事責任年齢の引き下げの必要性をめぐる議論は、折に触れて再燃してきました。2015年には、エフライム・フィーリョ下院議員(DEM/パライバ州選出)が、凶悪犯罪の場合に限り刑事責任年齢を18歳から16歳に引き下げる法案を提起しました。

「凶悪犯罪(crimes hediondos)」とは、支配的な道徳観から見て最も重大かつ忌まわしいとされる犯罪のことです。ブラジルでは、強姦、殺人、強盗致死、未成年者や社会的弱者に対する売春の斡旋などがこれに該当します。

ブラジルでは成人年齢が憲法に明記されているため、同議員はこの変更を実現するために憲法改正案(PEC)を提出しました。この改正案は2015年に下院で可決されましたが、その後上院で否決されています。

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