南アメリカの歴史

ジョージ3世がメキシコに皇帝を据えたのはいつ?——史実に基づく検証

「イギリス国王ジョージ3世がメキシコに帝国君主(皇帝)を押し付けたのはいつか?」という疑問について、まず結論から述べると、そのような歴史的事実は存在しません。ジョージ3世がメキシコに皇帝を擁立した、あるいは帝政を強制したという記録は、いかなる史料にも残されていません。

ジョージ3世とメキシコの時代関係

ジョージ3世(1738年–1820年)は、1760年から1820年までグレートブリテン王国、のちには連合王国(イギリス)の王位にあった君主です。彼の治世中、メキシコはスペインの植民地「ヌエバ・エスパーニャ(新スペイン)」として統治されており、独立国家として存在していませんでした。

メキシコがスペインからの独立を果たしたのは1821年のことです。これはジョージ3世の死去(1820年)より後の出来事であり、時系列的に見ても、ジョージ3世がメキシコの政治体制に関与することは物理的に不可能だったといえます。

メキシコに帝政が存在したのはいつか

メキシコの歴史において帝政が成立したのは、以下の2つの時期です。

第一帝政(1821年–1823年)

独立直後のメキシコでは、アグスティン・デ・イトゥルビデが皇帝アグスティン1世として即位しました。これはメキシコ国内の勢力によるものであり、イギリス王室の関与はありません。

第二帝政(1864年–1867年)

フランスのナポレオン3世が介入して擁立したのが、オーストリア出身のマクシミリアン1世(フェルディナント・マクシミリアン)です。「外国勢力がメキシコに皇帝を据えた」といえば、通常この第二帝政を指します。ここでも関与したのはフランスであり、イギリスではありません。

混同されやすい背景

この種の誤解が生じる背景には、19世紀前半のヨーロッパ列強によるラテンアメリカへの干渉や、モンロー主義(1823年)に代表される列強間の緊張関係があります。また、イギリスはメキシコ独立後の1825年に比較的早く外交関係を樹立しており、経済的な影響力を持っていたため、「イギリスの関与」というイメージが広まりやすかったと考えられます。

まとめ

ジョージ3世がメキシコに帝国君主を押し付けたという出来事は歴史上存在せず、その前提自体が誤りです。メキシコにおける帝政は、イトゥルビデによる第一帝政と、ナポレオン3世の支援によるマクシミリアンの第二帝政の2度のみであり、いずれもイギリス王室とは無関係です。