フランクリン・D・ルーズベルト大統領による大恐慌への対応として知られる「ニューディール政策」は、救済(Relief)・復興(Recovery)・改革(Reform)という3つの目標を掲げた一連の政策・プログラムです。ニューディールはアメリカ社会に絶大な影響を与え、変革のリーダーとしてのルーズベルトの評価を確立しました。ここでは、その中心的な施策を詳しく見ていきます。
ニューディール政策の3つの柱
1. 救済――苦しむ国民への即効性のある支援
ルーズベルト政権はまず、大恐慌で生活を脅かされた人々への緊急支援を最優先としました。連邦緊急救援局(FERA)が設立され、失業者や困窮世帯に対して直接の経済援助が実施されました。
2. 復興――雇用創出と経済活性化
景気回復と雇用創出を目的としたプログラムも数多く展開されました。代表的なものとしては、道路やダムなどのインフラ整備に資金を投入した公共事業庁(PWA)、若者を森林保護や自然保全の仕事に雇用した市民保存隊(CCC)が挙げられます。
3. 改革――再発防止のための構造的変革
ルーズベルトは、将来の危機を防ぐには経済体制の抜本的な見直しが不可欠だと考えました。証券取引委員会(SEC)が設置されて株式市場の監視と投資家保護が強化されたほか、全国労働関係法(NLRA)により労働者の団結権と団体交渉権が保障されました。
その他の重要な政策・プログラム
4. 社会保障制度の創設
ニューディール最大の成果の一つが社会保障制度(Social Security)の誕生です。老齢年金と失業保険を提供するこの仕組みは、何百万ものアメリカ人の暮らしに経済的な安心をもたらし、今日まで続く福祉国家の基礎となりました。
5. 全国復興庁(NRA)
NRAは産業界を規制し、公正競争規約を確立しようとした機関でした。しかし運営上の課題が多く、短命に終わり、最終的には最高裁判所により違憲と判断されました。
6. テネシー川流域開発公社(TVA)
TVAはテネシー渓谷地域の総合開発を担う官営企業です。水力発電の建設、洪水対策、そして地域経済の振興を包括的に進めた、公共投資の成功例として知られています。
7. 農業調整局(AAA)
AAAは、農作物の過剰生産を抑制し農産物価格の安定を図ることで、苦境にあえぐ農家を支援することを目的とした政策でした。
8. 銀行改革――グラス・スティーガル法
1933年に成立したグラス・スティーガル法は、金融危機の再発防止を狙い、商業銀行と投資銀行の業務分離を実現し、銀行業界への規制を大幅に強化しました。
9. 全米産業復興法(NIRA)
NIRAは、業界ごとの公正競争規約や最低賃金の基準を定めることを認め、労働条件の改善と産業秩序の回復を目指した法律です。
10. 公共芸術事業(PWAP)
PWAPは、大恐慌で職を失った芸術家たちを救済するために設けられたプログラムです。公共の場に展示される美術作品の制作を委託し、文化振興と雇用創出を同時に実現しました。
まとめ――ニューディールが残した遺産
ルーズベルトの大恐慌対策は、アメリカ経済を危機から立ち直らせただけでなく、強固な社会的セーフティネットと規制ある経済の基盤を築きました。政府の役割拡大については批判の声もありましたが、ニューディールは危機に直面した国家が経済的・社会的課題に立ち向かう姿勢を示す、アメリカ史上屈指の転換点として今も記憶されています。