19世紀初頭のイギリスの郵便制度では、郵便料金が手紙の発信地と宛先の距離、そして使用した用紙の枚数によって決定されていました。実際、2枚の用紙を使うと料金は倍額になります。こうした費用の増加を回避するため、当時の人々はさまざまな独創的な工夫を編み出しました。たとえば、極小の文字で1枚の紙にびっしりと書き込み、紙の1ミリ単位の空間まで余さず活かすという方法です。
しかし、さらに奇妙だったのが「クロスレター(交差書簡)」と呼ばれる手法でした。

クロスレターの読み方
まず、交差して書かれた行には目を向けず、通常どおりの文章を読みます。次にページを90度回転させ、今度は交差した行を続けて読んでいくのです。一見すると読解は不可能に思われますが、少し練習すれば十分に判読できるようになり、しかも通常なら複数枚の用紙が必要になる文章量を、わずか1枚の紙に収めることができました。その結果、郵便料金を大幅に節約できたのです。

画像:earsathome および Bradfer Lawrence コレクション(英国国立公文書館所蔵)
背景:高額だった郵便料金
当時の郵便料金は非常に高額で、料金を受取人が支払うのが一般的でした。1840年にローランド・ヒルによる切手の導入と均一郵便料金制が実施されるまで、手紙のやり取りは庶民にとって大きな負担でした。こうした状況こそが、クロスレターのような驚くべき節約術を生み出す土壌となったのです。
※本記事はウィリアム氏の協力により作成されました。