ヨーロッパの歴史

二人の王の兄弟でありながらロンドン塔で処刑された男――クラレンス公ジョージの生涯(前編)

二人の王の兄弟でありながらロンドン塔で処刑された男――クラレンス公ジョージの生涯(前編)

本稿は『プランタジネット家(The Plantagenets)』より抜粋したものである。

イングランド史に類例なき運命

クラレンス公ジョージは、歴史上でも稀有な存在である。イングランド王エドワード4世とリチャード3世の兄弟であり、薔薇戦争期に「誰が玉座に着くか」を決める力を持つことから後に王位擁立者(キングメーカー)と称されるウォリック伯と姻戚関係を結び、数年間にわたりヨーク家の王位継承順位第一位であり、一時はランカスター家からも王位継承者と認められた人物である。それにもかかわらず、ウェストミンスターの玉座で生涯を終えるどころか、ロンドン塔の牢獄の中でその日々を閉じた。しかし、彼が自ら招いたこの末路を単なる「不運」と呼ぶことはできない。その最期は、彼の生き様を映すかのように、謎と伝説のベールに包まれているのである。

父リチャード・プランタジネットと薔薇戦争の始まり

クラレンス公ジョージは、ヨーク公リチャード・プランタジネットの次男として生を受けた。父リチャードこそ、エドワード3世の第二子および第四子の子孫としての自身の継承権の方が、プランタジネット朝ランカスター系最後の王であるヘンリー6世のそれよりも正当だと主張し、薔薇戦争の口火を切った人物である。リチャード・プランタジネットは1460年のウェイクフィールドの戦いで戦死し、結局その胸に王冠を飾ることはなかった。しかし、その長男――すなわちジョージの兄――にあたるエドワード4世が、父の果たせぬまま終わった夢を実現することになる。

二人の王の兄弟でありながらロンドン塔で処刑された男――クラレンス公ジョージの生涯(前編)

ヘンリー6世とエドワード4世に関する記事では、ヨーク家とランカスター家によるイングランド王位をめぐる抗争、すなわち薔薇戦争の推移を詳しく扱っている。本稿では主人公に焦点を絞るため、1461年のトウートンの戦いの後、兄エドワード4世が即位した時点まで話を進めることにしよう。ジョージは兄王からただちに最高の栄誉を与えられた。クラレンス公に叙せられ、ヘンリー6世の異母弟にしてランカスター派の重鎮であったエドマンド・テューダーの所領だったリッチモンドの土地を下賜されたのである。

二人の王の兄弟でありながらロンドン塔で処刑された男――クラレンス公ジョージの生涯(前編)

「王位擁立者」ウォリック伯との接近

薔薇戦争序盤におけるヨーク家最大の盟友は、リチャード・ネヴィル、すなわちウォリック伯であった。彼はエドワード4世とクラレンス公ジョージの従兄にあたる(両者の母はウォリック伯の父の妹である)。しかし時が経つにつれ、彼とエドワード4世の対立はさまざまな理由から先鋭化していった。そして両者の関係に決定的な亀裂を入れた「最後の藁」こそ、まさに本稿の主人公に関わるものだったのである。

ウォリック伯には息子がなく、娘が二人いた。ゆえに一族の遺産の将来は、娘たちの縁談如何にかかっていた。彼は幾度もエドワード4世に対し、長女イザベルを王弟ジョージ(クラレンス公)に嫁がせることを提案した。しかし王は引き延ばしに引き延ばした末、ついにこの縁談を拒絶したのである。

これを受けてウォリック伯は北方の所領へ退き、次なる一手を思案する間は王室評議会への召集にも応じなくなった。ウォークワース年代記によれば、1469年のクリスマスに王とウォリック伯の間で和解の儀式が執り行われたものの、「種々の事柄については合意に至ったものの、以後二度と互いに愛し合うことはなかった」という。伯はこうして、後に歴史に名を刻むことになるあの異名を掲げた行動路線へと踏み出していく。すなわち「王位擁立者(キングメーカー)」である。

兄王への反逆

ウォリック伯が関与したエドワード4世打倒の陰謀には、王にとって思いがけない、そしてさらに危険な人物が加わっていた。クラレンス公ジョージである。君主への反抗が自らの実弟から起こったことの意味はさることながら、決定的なのは、エドワード4世に男子がいない限りクラレンスがイングランド王位継承の第一順位にあるという事実だった。王が頑として拒んだクラレンスと娘との結婚が実現すれば、計画が成就した暁には、ウォリック伯の血筋がイングランドの玉座に就くことになるのだ。

クラレンスは1468年に18歳になった。それまでの数年間、兄王は彼に所領や爵位、金銭的給付をふんだんに与え、王国で最も有力な人物の一人へと仕立て上げていた。

二人の王の兄弟でありながらロンドン塔で処刑された男――クラレンス公ジョージの生涯(前編)

兄エドワードと同じく、彼は魅力的で、容貌すぐれ、聡明で、弁舌に優れていた。だが同時に、浅薄で甘やかされ、強烈な野心の持ち主でもあった。この最後の資質は、王が気前よく――しかし相応の功績なしに――与え続けた報酬によってかえって肥大化し、さらなる富への渇望を煽るばかりであった。従兄ウォリック伯の企みにとって、彼はまさに格好の餌食となったのである。

1469年、決起の時

エドワード4世は、「レデスデイルのロビン」なる人物に率いられた北部の反乱鎮圧のため軍を率いた。王の随行には王妃の実家ウッドヴィル一族の面々と、弟のグロスター公リチャードが名を連ねていた。ところが、ウォリック伯、クラレンス公、そしてカンタベリー大司教ジョージ・ネヴィルに各自の従士団を率いて合流するよう使者を送っても、彼らは応じるどころか、サンドウィッチから船出し、ウォリック伯の伝統的な拠点であるカレーへと向かったのである。

カレーから彼らは、エドワード4世への明白な挑戦となる二つの行動に出た。1469年7月11日、王が断固として反対していたクラレンス公ジョージとウォリック伯の娘イザベルとの婚礼を挙行したのである。さらに王宛ての書簡を送り、「レデスデイルのロビン」の反乱への支持を表明した。

7月16日、ウォリック伯とクラレンス公は反乱軍との合流を目指してイングランドへ帰還した。ケントに上陸し、ロンドンを通過した後、一路北へ向かいながら沿道で支持者を募っていった。ノッティンガムにいたエドワード4世は、北からの「ロビン」の軍勢と、南からのウォリック伯・クラレンス公の軍勢とに挟撃される形に追い込まれた。

二人の王の兄弟でありながらロンドン塔で処刑された男――クラレンス公ジョージの生涯(前編)

エッジコートの惨敗と王の捕縛

ウェールズからの増援への期待は、7月26日のエッジコートの戦いで王党派軍が反乱軍によって壊滅させられたことで打ち砕かれた。この知らせが王の陣営に届くと、兵士たちの大量脱走が発生した。孤立無援となり絶望の淵に立たされたエドワード4世は、カンタベリー大司教ジョージ・ネヴィルに捕縛され、難攻不落のウォリック城へと連行された。

ここに政治的膠着状態が生じた。エドワード4世が自らの城に囚われ、王室評議会が敵対している状況では、ウォリック伯に統治の術はなかったのである。しかも王の捕縛の報はイングランド全土に暴力の波を巻き起こし、宿怨を抱える諸家が権力の空白に乗じて古い私怨を晴らし合った。ウォリック伯は君主の身柄を自由に操れたが、王としての権威をもって自らを押し通す力は持ち合わせていなかった。彼は王国の統治を担保する唯一の解決策に行き着く。1469年10月、ウォリック伯はエドワード4世を解放したのである。

王は北部の反乱を鎮圧すると、凱旋の様相でロンドンへ帰還した。華やかな行列で群衆の前に現れ、忠臣たちに囲まれていた。王は北部で起きた一連の出来事に対する一般恩赦を発布し、統治を続けながら、ウォリック伯とクラレンス公は赦免済みであり、今や自分の最良の友人たちの一員だと四方に高らかに宣言した。だが、その後の展開はこの言葉を真っ向から覆すことになる。それについては、クラレンス公ジョージを扱う本シリーズ第二回で詳しく見ていくことにしたい。

画像・図版の出典

画像|ウィキメディア・コモンズ、著者アーカイブより。
家系図|『シェイクスピアが語らなかった薔薇戦争』のためにベンチュラ・コンテンツが作成。

参考文献

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CARTER, Alice. The Women of the Wars of the Roses. Ebook Edition, Editor Alicia Carter, 2013.
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FERNÁNDEZ DE LIS, Daniel. What Shakespeare Didn't Tell You About the Wars of the Roses. Madrid, Libros.com, 2020.
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JONES, Dan. The Hollow Crown: The Wars of the Roses and the Rise of the Tudors. London, Faber & Faber Limited, 2015.
― The Plantagenets: The Kings Who Made England. London, Ed. William Collins, 2012.
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― The Wars of the Roses: The Key Players in the Struggle for Supremacy. Stroud, Amberley Publishing, 2015.
― Richard III: Loyalty Binds Me. Stroud, Amberley Publishing, 2018.
LICENSE, Amy. Cecily Neville, Mother of Kings. Stroud, Amberley Publishing, 2015.
SCHAMA, Simon. A History of Britain. London, BBC Worldwide Limited, 2000.
STRONG, Roy. The Story of Britain. London, Ed. Pimlico, 1998.
WILSON, Derek. The Plantagenets: The Kings That Made Britain. Ebook Edition, London, Quercus Edition Ltd., 2014.