ヨーロッパの歴史

北アフリカの決戦――ビザンツ帝国はいかにしてヴァンダル王国を滅ぼしたか

北アフリカの決戦――ビザンツ帝国はいかにしてヴァンダル王国を滅ぼしたか

ヴァンダル族はゲルマン系民族の一つである。フン族の圧力を受けた大移動時代、彼らはアゾフ海周辺地域に定着することとなった。そこから更なる幸運を求めて西方へ移動し、ライン川流域にまで到達した。

その後、ヴァンダル族はヒスパニア(現在のスペイン)に定住し、やがて北アフリカへと渡った。そして王ゲンセリック(ゲイセリック)の時代に強大な国家を樹立した。455年には遠征の一環でローマ市を攻略・略奪し、「ヴァンダリズム(蛮行)」という言葉を世界の語彙に刻ませることとなった。

533年までのビザンツ帝国とヴァンダル王国の関係は、中立的、ときに友好的と評しうるものだった。ところが、ゲリメルが正統な王を廃してクーデターで王座を奪うと、情勢は一変する。正統な王を支持していた東ローマ帝国に矛先を向けたのである。これを受けて皇帝ユスティニアヌス1世は、名将ベリサリウスをヴァンダル討伐に派遣することを決断した。その遠征軍は、騎兵5,000と歩兵10,000という少数精鋭であった。

ベリサリウスは北アフリカに上陸すると、アド・デキムムの戦いでヴァンダル軍を撃破することに成功した。だがゲリメルは軍を率いて退却し、カルタゴ南方のトリカマルム付近で次の会戦に備えた。ここでこの戦争の決定的な戦いが繰り広げられることになる。開戦に先立ち、ベリサリウスは自らの兵士たちへ次のように語りかけた。

「諸君への訓示など不要だと思う。つい先日、敵を完膚なきまでに打ち破り、カルタゴとリビア全土を諸君の武勇の戦利品とした者たちに、いまさら何を言えようか。勝者である諸君の闘志は未だ燦然と輝いており、勇気を促す言葉も要らないだろう。ただ一つだけ、今こそ思い起こしてほしい。ここで同じ勇猛さを発揮すれば、ヴァンダル人の希望は崩れ落ち、戦争は終わるのだと。

だからこそ諸君には、これまでの労苦を実りあるものとするために、この戦いへ喜んで赴くあらゆる理由がある。ヴァンダル人のことなど想う必要すらない。戦いの勝敗は、兵力の多寡でも肉体の頑丈さでも決まらない。魂の強さによって決まるのだから……」

訓示を終えたベリサリウスは、将軍ヨハネスに全騎兵の指揮を委ね、自らは選りすぐりの親衛騎兵「ブケラリオス」500騎のみを傍らに置いた。騎兵を先鋒に据えたビザンツ軍は、敵との決戦へ向けて前進を開始した。

両軍の布陣

ヴァンダル軍は今回こそ防御的な戦術を採用し、小さな川の堤防の背後に陣を敷いて、ビザンツ軍の攻撃を迎え撃つ構えを見せた。ゲリメルは全軍を二列の戦列に編成した。第一列はもっぱらヴァンダル重装騎兵からなり、王の弟ザゾンがこれを指揮した。後方の第二列には、6,000名のムーア人軽装騎兵が配された。

対するビザンツ軍もまた二つの戦列を組んだ。第一列は純然たる騎兵のみで、大きく広がる敵の正面全体を覆い尽くせるよう散開配置された。その後ろには歩兵の全軍と、ベリサリウス自らが率いるブケラリオス500騎が展開した。やがてベリサリウスは合図を送り、騎兵指揮官ヨハネスに敵中央への攻撃を命じた。狙いは、ヴァンダル軍の支配する川向こうの岸に橋頭堡を築くことにあった。

挑発と反復攻撃

ベリサリウスは、敵を誘い出して攻撃させるべく、ヨハネスに少数の部隊で川を渡らせ、囮の役目を負わせた。しかしヴァンダル軍は罠に引っかからなかった。そこでベリサリウスは、数的優位を保ちながらも防御態勢を崩そうとしない敵の意向を見抜いた。以降、彼はヨハネスへ、敵中央に絶え間ない攻撃を加えるよう命じた。ただし大規模な白兵戦へ発展させず、押され気味になれば退却し、直ちに再攻撃を仕掛けるように、と。

ヨハネスは全ブケラリオスの増援を得て、将帥の指示に忠実に従った。とはいえ、攻撃を繰り出すごとにその威力と勢いは増していった。ヴァンダル兵はビザンツ騎兵の雨と降る矢に苦しめられ、距離を詰めて一騎打ちを挑もうとした。すると、より重武装したブケラリオスが割り込み、物怖じせずヴァンダル兵と斬り結んだ。

ついに手痛い圧迫を受けたヨハネスは退却を下令した。しかしほんの数分後、ビザンツ騎兵は再度の攻撃に転じ、敵に一息つく暇さえ与えなかった。今度はブケラリオスが突撃の先鋒を担い、第二梯団に控える騎兵たちの矢がこれを援護した。この複合攻撃の重みに耐えかね、敵戦線には崩れの兆しが現れ始めた。ベリサリウスはそれを見て取り、全軍による総攻撃を命じた。まさにその刹那、一人のブケラリオスがヴァンダル王の弟ザゾンを討ち取った。弟の死を目の当たりにしたゲリメルは、戦場から逃げ去った。

王国の終焉

指揮官を失ったヴァンダル軍は、ビザンツ全軍の猛撃に打ちのめされて崩壊した。同盟者であるムーア人たちも、味方戦線の瓦解を目にすると、同じように潰走した。こうして戦いは、ベリサリウスにとってまた一つの輝かしい勝利となった。損害の多寡が勝敗を分けたのではない。生存したヴァンダル兵は同盟軍を欠いてもなお、数ではビザンツ軍を上回っていた。ベリサリウスが粉砕したのは、彼らの士気と抗戦意志だった。それは彼らにとって何よりも致命的であった。のちにゲリメルも捕らえられ、ヴァンダル王国はここに完全に滅亡した。北アフリカはビザンツ帝国の版図へと組み込まれていくのである。

北アフリカの決戦――ビザンツ帝国はいかにしてヴァンダル王国を滅ぼしたか

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