実は、ジャンヌ・ダルクが正式にフランス軍へ「入隊」したという事実はありません。当時の軍隊には現代のような入隊制度は存在せず、彼女はむしろ、王太子シャルル7世のもとへ自ら赴き、神から与えられた使命を訴えることで、フランス軍を率いる立場を獲得したのです。
農村の少女から軍の指導者へ
ジャンヌ・ダルクは1412年頃、フランス北東部のドンレミ村に生まれた農家の娘でした。13歳頃から「神の声」を聞くようになったとされ、イングランド勢力に対抗し、シャルル7世を正統なフランス国王として戴冠させるという使命を自らに課したといわれています。
1429年、まだ10代だった彼女は男装し、少数の護衛とともにシノンの城へ向かい、シャルル7世との面会を実現しました。彼女の揺るぎない信念と熱意は周囲を圧倒し、やがてオルレアンの包囲網を破る救援軍への参加を認められることになります。
百年戦争における歴史的な活躍
ジャンヌは1429年のオルレアン包囲戦においてフランス軍の士気を大きく高め、勝利へと導きました。その後もロワール地方での戦いやランスへの進軍に深く関わり、同年7月にはシャルル7世のランス大聖堂での戴冠式を実現させます。
つまりジャンヌ・ダルクとは、入隊手続きを経て一兵卒となった人物ではなく、信仰に基づく強烈な使命感とカリスマ性によって、わずか10代でフランス軍全体を率いることになった、歴史上でも極めて特異な存在だったのです。