ユダヤ人に対する差別は、数千年にわたって繰り返されてきました。ユダヤ人への憎悪や偏見を指す「反ユダヤ主義(アンチセミティズム)」は、時代や地域によって形を変えながら、歴史のさまざまな場面で現れてきました。この記事では、ユダヤ人が差別を受けてきた主な時代を、古代から現代まで順に振り返ります。
古代世界における迫害
古代においても、ユダヤ人は多くの地域で迫害や差別に直面していました。とくにローマ帝国では、ユダヤ人に対してさまざまな法的制限が課され、社会問題や経済問題の責任を押し付けられることも少なくありませんでした。紀元70年のエルサレム神殿破壊後には、多くのユダヤ人が故郷を追われ、世界各地へ離散していきました。
中世ヨーロッパでの差別
中世のヨーロッパでは、ユダヤ人への差別がさらに広範囲に及びました。多くの欧州諸国は、経済活動の制限、居住地区の指定、宗教実践への干渉など、ユダヤ人に対する法的な規制を設けました。さらに、群衆による襲撃事件やポグロム(集団虐殺)、強制的な改宗など、暴力の標的となることも頻繁にありました。ペスト流行期には「井戸に毒を入れた」といった根拠のない中傷により、大規模な迫害が起こった例もあります。
イベリア半島での迫害
現在のスペインやポルトガルにあたるイベリア半島でも、中世から近世にかけてユダヤ人は深刻な迫害を受けました。15世紀末に設立されたスペイン異端審問所は、ユダヤ人を主な対象とし、カトリックへの改宗を強いるか、さもなくば国外追放するかの選択を迫りました。1492年には、改宗を拒んだユダヤ人たちがスペインから大量追放されるという悲劇が起きています。
19世紀〜20世紀の反ユダヤ主義
19世紀から20世紀にかけて、ナショナリズムの高まりと反ユダヤ主義的な思想の台頭により、差別や暴力は新たな段階へと進みました。フランスの「ドレフュス事件」やロシアでの一連のポグロムは、この時代を代表する反ユダヤ主義の事例として知られています。こうした風潮は、やがて20世紀最大の悲劇につながっていくことになります。
ホロコースト――最も深刻な悲劇
ユダヤ人差別の歴史の中で最も悲惨だったのが、第二次世界大戦中に起きたホロコーストです。ナチス・ドイツは組織的かつ計画的な絶滅政策を実施し、約600万人のユダヤ人と、それ以外にも数百万人の人々が命を奪われました。これは人類史上、前例のない規模のジェノサイド(大量虐殺)となりました。
ホロコースト以後の歩みと現在の課題
ホロコースト後、世界では反ユダヤ主義と闘う取り組みが本格化し、ユダヤ人コミュニティの再建も進められてきました。今日、多くの地域でユダヤ人への差別は大幅に減少しています。しかし、偏見やヘイトスピーチ、ときには暴力といった形で、反ユダヤ主義は今なお完全には消え去っていません。歴史から学び、あらゆる差別に立ち向かい続けることが、私たち一人ひとりに求められているといえるでしょう。