ローマ軍、決戦を受け入れる(12月末)
紀元前218年冬、第二次ポエニ戦争の序盤。トレビア川畔での対峙は、ついに決戦の時を迎えようとしていた。以下は、歴史家リウィウスが伝える開戦前夜の出来事である。
トレビア川の河原とマゴの伏兵
両軍の間には一本の川が流れていた。その川は四方を深い岸で囲まれ、湿った草や灌木、雑木が生い茂っていた――手つかずの荒れ地にありがちな光景である。実はこの暗く鬱蒼とした場所なら、騎兵隊さえ潜ませることができた。ハンニバルは自ら地形を視察し、それに気づくと、弟のマゴにこう命じた。
「ここがお前の持ち場だ。全軍の中から騎兵百人と歩兵百人を選び、第一の夜警の刻に私のもとへ連れてこい。今は食事をとり、休息することが先だ」
そう言って軍議を解散させると、マゴはすぐさま精鋭の部隊を率いて現れた。
「見るところ、恐れを知らぬ勇士たちだ」とハンニバルは言う。「だが、数においても武勇においても確実に優位に立つために、お前たちは歩兵・騎兵のいずれの部隊からでもよい、己に似た勇者を九人ずつ選ぶがよい。マゴがどこで待ち伏せるかを指示してくれるだろう。相手になるのは、こうした奇策を見抜くことなど到底できない敵だ」
かくしてマゴ率いる千騎の騎兵と千人の歩兵は、闇の中へと姿を消した。
ヌミディア騎兵による挑発
夜明け、ハンニバルはヌミディア騎兵に命じてトレビア川を渡らせた。その任務は、ローマ陣営の周囲を駆けめぐって前哨部隊を挑発し、敵を戦いへ引きずり出すこと。そして一旦戦闘が始まれば、少しずつ退却しながら敵を川のこちら側へ誘い込むように、と指示されていた。
一方、他の歩兵・騎兵の将帥たちには、全兵士に食事を取らせたのち馬に鞍を置かせ、武装したまま合図を待てとの命令が下されていた。
センプルニウスの出撃と厳冬の苦難
センプルニウスは、ヌミディア騎兵による最初の挑発を受けるや否や、まず自慢の全騎兵を前進させ、続いて歩兵六千、そして最後に全軍を出撃させた。長らく心に温めてきた決戦の意志を、どうしても早く実行したかったのである。
その日、霧はことのほか冷たく、アルプスとアペニン山脈にはさまれたこの地方では雪が降りしきっていた。川や沼地の近くにあるため、空気は一段と冷え込んでいたのである。人も馬も急いで出撃したため、事前に口にするものは何もなく、厳しい季節に備えた防寒の支度もしていなかった。彼らはもはや体温すら保てず、川に近づくにつれ、冷たい空気が身を刺して凍えるばかりだった。
まもなく彼らは、眼前から逃げるヌミディア騎兵を追って川に入った。前夜の雨で増水していたトレビア川は、胸元まで水に沈む深さだった。川を渡り終えたとき、手足はすっかりかじかんで武器を握ることさえままならない。しかも日はすでに傾きかけ、ローマ兵たちは疲労と飢えと寒さに打ちひしがれ、力尽きていたのである。