古代の歴史

ミハイル・ブルガーコフ――権力と向き合ったロシア文学の巨匠

ミハイル・ブルガーコフ――権力と向き合ったロシア文学の巨匠

ミハイル・ブルガーコフ(1891年〜1940年)は、ロシア革命後に本格的に文学活動を始めたロシアの作家です。宗教史学者を父に持ち、当初は医学の道へ進みましたが、やがて文筆に転じ、ソ連政権との緊張関係の中で数々の傑作を生み出しました。

医師から作家へ――若き日々

ブルガーコフは1891年、キエフに生まれました。父は宗教史学者であり、知的な環境の中で育ちます。彼は医学を学んで医師となり、第一次世界大戦が勃発すると前線後方で診療に従事しました。この医療現場での経験は、後の作品にも色濃く反映されています。

革命と内戦の時代

1917年のロシア革命が起こると、ブルガーコフは「義勇軍」と呼ばれた白軍(白衛軍)に加わりました。革命と内戦で故郷キエフが揺れ動く激動の体験は、戯曲『トゥルビーン家の日々』や自伝的小説『白衛軍』などの題材となっています。1921年にはモスクワへ移り住みました。

モスクワでの文学生活と検閲

当初は主に記事やルポルタージュを執筆していましたが、表現の自由が一時的に認められた時期を追い風に、創作活動を本格化させました。しかしその後、彼の作品の多くは「反革命的」だとして検閲にかけられ、生前に発表できたものはごくわずかでした。

風刺的な中編小説『犬の心臓』もその一つです。科学者が野良犬に人間の脳を移植するという奇想天外な物語は、体制への痛烈な批判とみなされ、長らく発禁扱いとなり、ついに1987年になってようやく公刊されました。

死後の再評価と『巨匠とマルガリータ』

ブルガーコフは1940年にこの世を去りました。しかし1960年代に入ると、生前未刊行だった作品の多くが次々と出版され、彼は大きな名声を獲得することになります。中でも最もよく知られているのが、悪魔ウォランドと魔女マルガリータが登場する長編小説『巨匠とマルガリータ』です。スターリン時代のモスクワを舞台にした幻想的かつ風刺的なこの作品は、20世紀ロシア文学の最高峰の一つとして高く評価されています。

今日、ブルガーコフは「作家と権力の関係」を描き続けた作家として記憶されており、その作品は世界中で読み継がれています。